2−4−1 概要

〔調査目的〕

 浅部反射法探査では、深部反射法探査同様、地表で人工的に地震波を発生させ、地下の地層境界で反射して地表に戻ってくる反射波をとらえることにより、地下の地質状況を探査する方法である。地表での探査により、地下の地質構造の視覚的なイメージを得ることができる。浅部反射法探査においては、深部反射法探査で明らかとなった断層位置前後1.5kmにおいて測線を設け、測線下の深度数百m程度までの地質構造イメージを詳細に得ることを目的とした。

〔調査地域〕

  富山県婦負郡婦中町西本郷〜安田

〔測線〕

  婦中町西本郷地内JR高山本線踏切脇から呉羽山断層を横断し、婦中町安田地内の呉羽丘陵付近に至る1.58kmの区間(図2−4−1

〔探査深度〕

  500m

〔調査期間〕

  測量作業期間 平成8年10月7日〜10月10日(4日間)

  探査実施期間 平成8年10月14日〜10月22日(9日間)

なお、10月11日〜13日は安田城跡において、町内の祭事があり、現場作業を自粛した。また、日産輸送兜~地内(測点5〜31)での起震は業務に差し支えのないよう休日に行った。

表2−4−1に測定作業状況概要を示す。

〔調査実施〕

      応用地質株式会社 探査工学研究所

      担当者:高橋  亨 〔技術士:応用理学部門〕

甲斐田 康弘 〔浅部反射法探査測定作業〕

 浅層反射法探査の測線配置を図2−4−2に示す。表2−4−2に探査仕様を示す。当初計画では、1測線総延長1,000mとしたが、深度500m程度以浅の探査のため、解析の都合上延長1,590mで実施した。今回の探査では、発震装置として重錘落下型震源(オートハンマー車:WAH3400型)を用いた。この震源は、約400kgの重錘をワイヤー駆動装置を用いて約1〜3mつり上げ、自由落下により地面に打ちつけるものであり、深度数百mの探査が可能な震源である。受振器としては固有周波数10Hz、12連のジオフォンストリングスを用いた。またデータ収録装置としてはOYO Geospace社製のDAS−1を用いた。DAS−1は、シグマデルタ方式のA/D変換器を搭載した地震探査装置で、24ビットという高い分解能を有する。

〔観測作業〕

  浅層反射法探査の観測に先立って測量を実施した。測量では、測線を設定し、受振点間隔が5mとなるよう受振点位置の測量を行い、杭の敷設またはマーキングを行った。これら受振点のうち奇数番の点を発震点とした。巻末に測量結果を添付する。

 反射法探査の観測では、以下に述べる受振器・ケーブルの設置作業、発震作業、データ収録作業を全測線にわたって繰り返し行った。図2−4−3に浅層反射法探査の観測作業の概要、表2−4−3に浅層反射法弾性波探査使用機器一覧を示す。また巻末に、観測状況の写真を示す。

・受振器・ケーブルの設置

 図2−4−3に示すように、測量で設定した各受振点に受振器(ジオフォンストリングス、12連)を設置する。本探査の観測では、各ジオフォンの間隔を1m、アレイ長を11mとした。次に受振器とデータ収録器を専用ケーブル(CDPケーブル)で接続する。また発震時刻を知らせるために、震源からトリガーケーブルをデータ収録器に接続する。

・発震作業

 重錘の落下点が測量で設定した発震点位置となるように起振車を移動し、重錘を高さ1〜2mまで引き上げる。落下点には、舗装面の保護のためウレタンマットを敷き、その横には地震計の落下を感知するトリガーセンサーを設置する。本部の合図を受け、重錘を落下させる。

・データ収録

 観測本部では、発震点位置に応じて受振する96点の受振器を選択し、設定を行う。発震点の準備ができたら、受振点におけるノイズ状況をモニターする。そして比較的ノイズの小さい時に発震点に連絡し、重錘を落下させる。重錘が落下すると、その横に置いたトリガーセンサーからの信号を受け、データ収録器が各受振器からのデータを収録する。観測者はそのデータを観察し、良好であると判断した場合、そのデータをハードディスクに保存する。同様に同一発震点において、10回以上の記録を収録・保存した後、発震点を次の点に移動させる。このように同一発震点において収録した記録は、解析時に、ノイズを多く含んだトレースを削除した後に、スタック(垂直重合)した。

 なお、本探査の観測では、観測地盤条件等を考慮して測線の西側(測点番号の大きい方)から観測を始めた。原則として、発震点からの距離が最も近い受振点が5m、最も離れた受振点が480mとなる、インライン展開とした。また測線の東端では、受振器の移動は行わない受振器位置固定のまま96チャンネルの観測を行った。

測線中央の安田城付近の区間は一部民家に近接した部分があるが、町会長への事前説明及び回覧による周知と個別訪問を実施し周辺住民の理解を得た結果、一切の苦情もなく予定通り全測定を完遂できた。