4−1−1 <雨滝−釜戸断層>

雨滝−釜戸断層については,延興寺地区,大坂地区で重点的な調査を実施した.

延興寺地区では,新たに断層露頭f19を確認した.平成9年度の調査で発見された断層露頭f15とともに,地形的なリニアメントの直下に位置する.しかしながら,これらの断層露頭からは,雨滝−釜戸断層の活動履歴に関する情報は得られなかった.f15露頭近傍で実施した2本の斜め45゜ボーリング調査の結果からも,雨滝−釜戸断層の主断層の位置,性状(地質境界,断層破砕帯の有無・形状)について確証を得ることはできなかったが,BE−1で得られたコアの破砕度,とくに凝灰岩より上部の黒色泥岩(深度4.30〜8.25m)の破砕度の高さは,雨滝−釜戸断層の破砕帯の一部を示している可能性があると考えられる.

大坂地区では,平成9年度の調査で発見された断層露頭f16,17の露頭精査を実施した.その結果,断層露頭f16では,雨滝−釜戸断層は2層ある段丘堆積物のうち下位のものを見かけ上逆断層で切っており,上位の段丘堆積物には覆われていることが判明した.下位の段丘堆積物に含まれるシルト層の形成年代が6,460±40y.B.P.という値が得られたことから,この露頭における断層の活動時期は約6,500年前以降と考えられる.

断層露頭f17では,雨滝−釜戸断層は,約5万年前に降下したとされる大山倉吉軽石層(DKP)や約2.5万年前に降下したとされる姶良Tn火山灰層(AT)を切っていることが確認された.断層は東に傾斜した東上がりの逆断層である.また,地層の変形の程度や断層を挟む地層の分布状況からみると,DKPとその上位の粘土層の間,DKPより下位の有機質シルト層と砂礫層の間に変形量の差が認められた.ATの下面を基準とすると鉛直変位量は110cm以上,同じくDKPの鉛直変位量は250cm程度である.

f17露頭ではAT以降に堆積した地層が欠如しているため,2.5万年以降の地層における断層変位の状況を把握するために,f17露頭の5m南側でTO−2トレンチ調査を実施した.その結果,トレンチの壁面において,東へ傾斜した東側隆起の逆断層を確認した.断層は,姶良Tn火山灰層(AT)より上位の腐植土層を切っていたものの,さらに上位の腐植土層には変位を与えていないことが明らかになった.これらの腐植土層について,14C年代測定を実施した結果,断層を覆っている腐植土層からは3,590±70y.B.P.,断層によって切られている腐植土層からは7,490±60 y.B.P.という値を得た.したがって,TO−2トレンチ地点における雨滝−釜戸断層の最新活動時期は,約7,500年前〜3,600年前の間に絞り込まれることが明らかになった.地層の変形程度や,断層を挟む分布状況から,AT堆積以降の層準,DKP堆積前後の層準にも有意な差が認められた.DKP直上の礫混じりシルト層下面を基準とすると鉛直変位量は250cm以上,大山東大山火山灰層(DHg)直上のシルト−砂礫層で80cm以上,その上位のシルト−砂礫層で約 60cm程度,砂礫混じりシルト層で見かけ40cm程度である.ただし,上位層の中では断層は2本に分岐しながら低角化(約 20゜)しており,実際の変位量は計測値より大きいと考えられる.

断層露頭f17から南東約100mの,閉塞丘と山地の間のリニアメント上の鞍部ではTO−1トレンチ調査を実施した.その結果,TO−1トレンチでは,N2〜N27までのほぼ全域に分布する被覆層は,断層による変位を受けておらず,断層を確認できなかった.14C年代測定の結果,トレンチ壁面で観察できる被覆層のうち,最も下位の有機質シルト層から24,830±150y.B.P.の値を得た.したがって,TO−1トレンチ地点での雨滝−釜戸断層は,約25,000年前以降活動していないか,主断層が被覆層が分布する鞍部ではなくその西側あるいは東側の基盤岩内を通っているものと考えられる.