3−1−1 地表地質踏査(精査)

L−1(雨滝−釜戸断層)に沿った地域で地表地質踏査(精査)を実施した.踏査ルートマップを図3−1−1に示す.

地表地質踏査(精査)の結果,黒谷川中流の砂防ダム上流300mの河岸に新たな断層露頭f19が確認された(写真3−1−1−1写真3−1−1−2).f19露頭における断層は,火砕岩中みられる走向 N82゜E,85゜Sの逆断層で,幅12〜15cmの粘土と幅20cm程度の破砕帯が認められる.上位は崖錐堆積物により覆われている.断層は,黒谷川の河床に露頭しており,他の火砕岩からなる区間と比べて浸食が著しく,川幅がやや広がっている.

平成9年度の調査で発見された断層露頭f15についても,再度詳細な観察を行った.f15露頭は,小田川の延興寺橋下流(北方)約250mの左岸側の河床に露頭している.f15露頭は,凝灰岩中に幅20cm程度の逆断層センスの亀裂みられ,半固結状の腐り礫層で充填されている.上盤側の境界面には断層粘土と考えられる厚さ5mm程度の粘土層を挟在している.走向傾斜は,N25゜W,50゜Sと測定された(図3−1−2−1図3−1−2−2写真3−1−2−1写真3−1−2−2).断層の上部は明らかに固結度の異なる砂礫層により覆われており,断層による変位は認められない.この砂礫層からは,年代測定用試料をはじめ諸分析用試料を得ることはできなかったが,性状,固結度からみて,小田川の現河床堆積物と考えられる.

さらに断層露頭f15より5m程上流側の凝灰岩中に,幅5cm程度の粘土層が挟在されている断層露頭f15’が新たに発見された.この粘土層の走向傾斜は,N43゜W,65゜Sで,凝灰岩中に見られる薄層の走向傾斜と大きく異なっている(図3−1−2−3写真3−1−2−3).この粘土も,上位の現河床堆積物に覆われている.

これら河床の露頭に見られる断層は,明瞭な破砕帯を伴わないこと,地形から推定される断層の走向とはやや異なることなどから,いずれも雨滝−釜戸断層の主断層とはいい難く,主断層から枝分かれした副次的な断層が露出しているものと考えられる.したがって,小田川河床の露頭では雨滝−釜戸断層の主断層の位置,性状を確認することはできなかった.

なお,延興寺地区の山麓付近では,断層位置,性状(地質境界,断層破砕帯の有無・形状)に関する新情報は得られなかった.

以上のような踏査結果から,小田川河床のf15露頭の近傍でボーリング調査を行い,主断層の位置確認に努めることとした.