(3)菅野地区

@地表地質踏査(精査)

菅野地区では,平成9年度の調査で,第四紀層(更新世中期以前の扇ノ山起源の溶岩以降の降下火山灰層)を変位させている断層露頭(f6)が確認されている.また,連続的な断層変位地形が認められる地域である.栃本南方断層の形状(地質境界,断層破砕帯の有無・形状)や活動履歴(活動性・平均変位速度・最新活動時期・単位変位量および地震再来間隔)の諸元に関する新情報を得る目的で実施した.

調査結果をルートマップ(1/5,000)に記載した.

Aボーリング調査

平成9年度の調査において,栃本南方断層は断層変位地形から西上がりの逆断層で,西に流下する小河川がせきとめられたようになって形成された湿原と,その西側を区切る扇ノ山火山起源の丘陵との境界付近に伏在していると推定されていた.

ボーリング調査は,菅野地区における栃本南方断層(主断層)の詳細な位置,性状を明らかにする目的で実施した.湿原には新しい堆積物が厚く堆積していると推定され,年代測定用試料も得られる可能性が高いことから,栃本南方断層の活動履歴(活動性・平均変位速度・最新活動時期・単位変位量および地震再来間隔)の諸元に関する新情報を得ることも目的とした.

湿原のミズゴケは県の天然記念物となっていることから,最も堆積物が厚いと予想される湿原中央でのボーリング調査は実施できなかったが,比較的新しい堆積物が堆積していると考えられる湿原の出口付近で,推定された断層を挟み込むように,ボーリングを6本掘削した.掘進長は,9.0mが1本,11.0mが1本,11.1mが1本,19.0mが2本,20.0mが1本である.なお,各ボーリングの位置は,浸食や山腹斜面の起伏の影響をできるだけ避けるため,それぞれ谷の中央に位置するようにした.

ボーリングはオールコアボーリングとし,φ86mmで実施した.得られたコアは,3mごとにコア箱に納め,コア観察(1/10)と写真撮影を行った.また,14C年代測定用試料を採取し,数点について分析を行った.

調査結果は,コア写真に記録し,ボーリング柱状図(1/100)から地質断面図を作成し,14C年代測定結果と合わせて栃本南方断層の活動履歴について検討した.また,1/10のコア観察記録は巻末試料として添付した.