1−6−2 大坂地区

地表質踏査(精査)を実施したが,新たな断層露頭を見出すことはできなかった.

断層露頭f16について露頭精査を実施した結果,凝灰岩が幅約2.2mにわたって破砕帯を形成しており,破砕帯の南端を境として南側が大きく落ち込み,全体として南落ちの逆断層となっていることが判明した.2層あるうちの上位の段丘堆積物は断層による変位を受けていないが,下位の段丘堆積物は断層に切られており,堆積物中に含まれるシルト層の14C年代が6,460±40年前であることが明らかになった.このことから,断層露頭f16地点での断層の活動時期は約6,500年前以降と推定される.また,その鉛直変位量は,少なくとも破砕帯の落差である75cm以上である.

断層露頭f17について露頭精査を実施した結果,東へ傾斜した東側隆起の逆断層が確認された.断層面の走向傾斜は,N18゜W,48゜Eであった.火山灰分析の結果,この露頭では大山倉吉軽石層(DKP:約5万年前),姶良Tn火山灰層(AT:約2.5万年前)が見出せたが,断層はDKPより下位の砂礫層からATより上位の腐植土層までを切断していることが確認された.ATの下面を基準とすると鉛直変位量は110cm以上,同じくDKPの鉛直変位量は200cm程度である.地層の変形程度や,断層を挟む分布状況からみると,DKP堆積以前と堆積以降にそれぞれ少なくとも1回は断層活動があったと推定される.

f17露頭のすぐ南側約5mの地点でTO−2トレンチを掘削調査した結果,東へ傾斜した東側隆起の逆断層が確認できた.断層面の走向傾斜は,N17°E,28°Eと測定され,DKPより下位のシルト層からATより上位の腐植土層までの層が断層によって切られていることが明らかになった.火山灰分析の結果,姶良Tn火山灰層(AT:約2.5万年前)や,それより上位に大山東大山火山灰層(DHg),大山笹ヶ平火山灰層(DSs)が確認された.

14C年代測定では,断層に切られていない腐植土層は3,590±70 y.B.P.,切られている腐植土層は7,490±60 y.B.P.という値が得られた.したがって,TO−2トレンチ地点における雨滝−釜戸断層の最新活動時期は,約7,500年前〜3,600年前の間であることが明らかになった.地層の変形程度や,断層を挟む分布状況からみると,AT堆積以降に形成された地層やDKPの堆積時期にもそれぞれ1回は断層活動があったと推定できる.ATとDKPに挟まれるシルト層の下面を基準とすると鉛直変位量は200cm以上,ATより上位のシルト−砂礫互層で80cm以上,さらにその上位のシルト−砂礫層では約60cm程度である.ただし,上位層の中では断層は2本に分岐しながら低角化(約20゜)しており,実際の変位量は見かけよりは大きいと考えられる.また,DKPよりも下位の地層は,DKPより変形の程度が大きいことから,この時期にも断層活動があった可能性がある.

したがって,雨滝−釜戸断層は,

@約 7,500年前〜3,600年前の間に1回(確実)

A約 2.5万年前〜7,500年前の間に少なくとも1回(ほぼ確実)

B約 5万年前〜約 2.5万年前の間に少なくとも1回(推定)

C約 5万年前以前に1回以上(可能性)

の活動があったと考えられる.

f17露頭の南東約100mの地点でTO−1トレンチを掘削調査した結果,基盤岩がつくる谷状の窪みを被覆層が埋積していたものの,雨滝−釜戸断層による変位を受けていないことが確認された.14C年代測定の結果,トレンチ底に露出したシルト層に含まれる木片の形成年代が24,830±150年前であることが明らかになったことから,少なくとも約25,000年前以降は,雨滝−釜戸断層はトレンチ区間で確認された被覆層が分布する谷筋ではなく,その西側あるいは東側の基盤岩内で活動しているものと推定された.