1−6−1 延興寺地区

地表地質踏査(精査)の結果,黒谷川中流の砂防ダム上流300mの河岸に新たな断層露頭f19が確認されたが,この露頭や小田川河床で確認できた断層露頭f15および断層露頭f15'などは,いずれも主断層とはいい難く,雨滝−釜戸断層の副次的な断層と考えられる.いずれの断層も,上位の現河床堆積物に覆われている.

断層露頭f15およびf19の走向は主断層の走向(全体的にはN50゜W)と不調和であるが,位置的には延興寺から大坂に延びるリニアメント(連続的な断層変位地形からみた雨滝−釜戸断層の延長線)と調和的な地点に位置している.

断層露頭f15の対岸で行ったBE−1,2の2本のボーリング調査の結果,ボーリングコアからは断層面や断層粘土など雨滝−釜戸断層の主断層を推定する結果は得られなかった.しかし,BE−1のコアはBE−2に比べて基盤岩中の亀裂の密度が高く,全般に破砕されており,角礫化,粘土化が進行していた.f15露頭およびf15'露頭で確認された断層の走向傾斜やBE−1およびBE−2のボーリング調査の結果を検討すると,BE−1上部の黒色泥岩の破砕度の高さは,雨滝−釜戸断層の破砕帯の一部を示している可能性があるが,主断層は未確認の範囲を通っている可能性も残されている.

以上のように,延興寺地区では,雨滝−釜戸断層の主断層の位置,性状(地質境界,断層破砕帯の有無・形状)について確証を得ることはできなかった.