(3)断層変位地形・リニアメント

調査地域における断層変位地形・リニアメントの判読により,L−1〜L−9の9本の活断層の可能性のあるリニアメントを抽出した(図3−8).雨滝−釜戸断層については,雨滝付近を通過するリニアメントが不明瞭で認定できず,「新編」日本の活断層(1991)によるものとは異なる結果となった(図3−9).また,扇ノ山北東断層についても,不明瞭で認定できなかった.

なお,活断層であるかどうかの確からしさ(確実度)の評価は,「新編」日本の活断層に基づいて行った(表3−6).

表3−6 活断層の確実度

以下,各リニアメントについて判読結果を述べる.

@ L−1(雨滝−釜戸断層) : 確実度U〜V,長さ8.5km

尾根の鞍部・棚状地形,直線状の谷,三角末端面などの連続により指示される.一部小田川上流部において,尾根及び谷の屈曲(左横ずれ)などの変位地形が認められる.全体的に明瞭であるが、釜戸付近では不明瞭である.

A L−2 : 確実度U〜V,長さ1.5km

直線状の谷及び尾根・谷の屈曲(左横ずれ)などの指示地形及び変位地形により判読され,明瞭であるが延長は短い.

B L−3(栃本南方断層) : 確実度U,長さ1.8km

東落ちを示す断層崖及び大規模な閉塞谷(堰止め谷)などの変位地形が認められ,明瞭に判読されるが延長は短い.

C L−4 : 確実度U,長さ3.3km

鞍部地形・直線状の谷などの指示地形及び南落ちを示す断層崖,断層池(北側隆起に伴う堰止め池?)などの変位地形が認められ,明瞭に判読される.

D L−5 : 確実度V,長さ1.4km

尾根の鞍部地形や棚状地形の連続により指示される.変位地形は認められない.

E L−6 : 確実度V,長さ3.3km

尾根の屈曲,鞍部・棚状地形,ケルンコル・ケルンバット地形などの連続により指示される.変位地形は認められない.

F L−7 : 確実度V,長さ3.3km

尾根の鞍部地形の連続,直線状の谷及び三角末端面などにより指示される.変位地形は認められないが,明瞭に判読される.

G L−8 : 確実度V,長さ2.0km

尾根の鞍部地形や棚状地形の連続により指示される.変位地形は認められない.

H L−9 : 確実度V,長さ1.6km

尾根の鞍部地形の連続及び直線状の谷などにより指示される.変位地形は認められない.

以上の各リニアメントの確実度は,L−1(雨滝−釜戸断層)・L−2でU〜V,L−3(栃本南方断層)・L−4でU,その他はVであり,活断層としての可能性は推定または疑いの域を出ないことがわかった.これは,断層変位地形の系統的な分布が乏しいことや地形面(段丘面など)を切る崖線が認められないなどが大きな原因であると考えられる.しかし,リニアメント分布域の大部分が山地部にあり,明瞭な変位基準地形が認めにくいことも原因の一つではないかと考える.

図3−8 空中写真によるリニアメント判読結果

図3−9 本調査と「新編」日本の活断層(1991)の判読結果の比較