(2)地形面区分

調査地域における主たる地形面は,山頂緩斜面,山腹緩斜面,段丘面(開析扇状地面),低地面が認識される.これらの中で,特に段丘面,低地面については更に細かく地形面区分を行った.

地形面区分の考え方及び区分方法は以下のとおりである.

・山頂緩斜面(S)は,溶岩台地の原面が比較的明瞭かつ広範に分布する地域を抽出した.

・山腹緩斜面(H)は,成因に係らず,山腹に認められる表示可能な緩斜面〜平坦面を抽出した.これらの中には,高位面(高位段丘相当)に対比されるものも含まれる可能性があるが,区分及び対比が困難なため一括で表示した.

・段丘面は,分布高度,地形面の開析程度,地形面の保存状況などから,高位より中位面(M),低位1面(L1),低位2面(L2)の3面に区分した.

中位面としたものは,“蒲生川の相山の対岸では比高が8m以上で,砂れき層の上に,大山上・中部火山灰層をのせているのが確認できる.従来の中位段丘れき,上位段丘れきを一括した.”(赤木・豊島・佐治,1976)と記載されている段丘面を指標とした.

低位1面としたものは,“蒲生川の真名付近に分布している段丘堆積層を模式的なものとするものである.一般に新鮮な円れき層からなる.比高は7m以下で小谷の合流地区に発達している.”(赤木・豊島・佐治,1976)と記載されている段丘面を指標とした.

低位2面としたものは,大局的には氾濫原・谷底平野として沖積面に区分される低地面の中で,段丘化及びやや開析が認められるものを区分した.

・低地面は氾濫原・谷底平野(沖積面:A)及び湿原(沖積面:P)に区分した.

以下に,区分した各地形面の分布状況及び性状について記述する.

@ 山頂緩斜面(S)

山頂緩斜面の代表的な分布域は,以下のとおりである.

・調査地域西部の鳥取市百谷北西付近の標高230〜287mにかけての山頂部

・調査地域西南部の鳥取市上野〜福部村清内谷〜岩美町唐川付近の標高160〜500mにかけての山頂部

・調査地域南部の国府町栃本・菅野付近の標高280〜551mにかけての山頂部

・調査地東南部の国府町河合谷高原付近の標高700〜1,089mにかけての山頂部

A 山腹緩斜面(H)

山腹緩斜面は,各流域の山腹に断片的に認められる.小田川流域の岩美町池谷付近及び外邑付近の標高40〜70mにかけて分布する緩斜面〜平坦面は,周辺の中位面との比高差から高位面相当とも考えられるが,それ以外の地域では分布高度や分布形態もまちまちで,厳密な区分及び対比は困難である.

B 中位面(M)

中位面は,地形面の開析程度は低く(原面の残存する面積が広い),保存状況も良いが,分布は断片的である.

代表的な流域について,中位面の特徴をまとめる.

・箭渓川流域

 標高30〜60m付近にかけて断片的に分布する.

・塩川流域

 標高30〜120m付近にかけて断片的に分布する.

・小田川流域

 標高40〜120m付近にかけて断片的に分布する.

・蒲生川流域

 標高70〜170m付近にかけて断片的に分布する.

・袋川・大石川・上地川流域

 標高250〜330m付近にかけて断片的に分布する. 

なお,山間部において,周辺の地形面との関係から中位面相当に対比されると判断される緩斜面も中位面に区分した.

C 低位1面(L1)

低位1面は,各流域に狭長かつ断片的に分布する.

代表的な流域について,低位1面の特徴をまとめる.

・箭渓川流域

 標高20〜70m付近にかけて断片的に分布する.

・塩川流域

 標高20〜80m付近にかけて断片的に分布する.

・小田川流域

 標高35〜120m付近にかけて断片的に分布する.

・蒲生川流域

 標高55〜160m付近にかけて断片的に分布する.

・袋川・大石川・上地川流域

 標高220〜300m付近にかけて断片的に分布する. 

なお,山間部や渓流において,周辺の地形面との関係から低位1面相当に対比されると判断される緩斜面〜平坦面も低位1面に区分した.

D 低位2面(L2)

氾濫原・谷底平野の中で,顕著な段化が認められるが,相対的に低位1面より低く,沖積段丘と判断される緩斜面〜平坦面を低位2面に区分した.

低位2面は,山間の谷底平野が,本流の下刻作用によって段丘化したタイプのものが特徴的である.

E 氾濫原・谷底平野(沖積面:A),湿地(沖積面:P)

氾濫原・谷底平野は,調査地域の低地に狭長に分布する.

湿地は,国府町菅野に分布する.