3−2 断層の活動性評価

断層の活動性を知るために、断層の活動間隔と最新活動時期について、平成9年度および平成10年度の結果を表3−2−1にまとめた。

地震の活動時期については、各地区での地質調査の結果から導いた。霞川地区では、平成9年度の結果から、埋没谷の発達回数に基づいて、4回ほどの活動間隔がまとめられており、活動の年代範囲のとりかたもあるが、約5000年前後の活動間隔が得られてい る。

平成9年度の箱根ヶ崎地区では、旧狭山ヶ池堆積物の層相から約20,000yBPの年代に1回、立川断層に関連した活動があったことが推定された。平成10年度の同地区では、軟 X線等による画像の解析や、それに付随した分光測定や初帯磁率に関連した分析により、17,000yBP付近の地震活動結果とおもわれるイベント堆積物の存在や、1,650yBP付近で著しい土壌化の進行からなんらかの環境変化が起こったことが間接的に推定された。 

国立市谷保地区では、黒ボク土の堆積時期が矢川の変遷と関連があり、それが立川断層の活動と関係するという仮説から、約5,600yBPころに一度断層活動があったとした。 またトレンチ観察でイベントをうけた地層の認定から、青柳礫層上位の河川堆積物の堆積後、青柳ローム層の堆積以前に活動がしぼられ、それは約12,000〜14,000 yBPの間で ある。

さらに、5,000年のころの黒ボク土層堆積後に、それらを切る1,200〜1,900yBPのころの堆積物からなる黒ボク土層も存在し、珪藻分析の結果とあわせ、そのころに矢川の流路や流量の変化があった可能性があり、それと断層活動とのなんらかの関係が考えられる。

最新活動時期は、平成9年度の霞川地区では、@断層運動による堰止湖の形成(古霞湖)、A湖成層の堆積開始年代から断層活動時期の推定いう間接的方法に依拠し、時期を推定した。この方法によって、立川断層の活動間隔は、山崎(1978)が推定した5,000年間隔とほぼ一致し、また断層の最新活動時期は最新の埋没谷の形成時期である1,100〜1,500年前頃とした。箱根ヶ崎地区では、前述の土壌化の進行による環境変化が、約 1,650±50yBPころ、さらに谷保地区での最新の黒ボク土層の堆積時期が1,220±60〜1,930±60yBPであり、近似した値が、1箇所だけでなく、立川断層沿いの3箇所で得られている。このため、現状ではこれらの値が、立川断層の最新活動に対応すると考えられ、年代の幅があるが、とくに1,500yBP〜1,900yBPの範囲に最新活動時期が狭められる可能性がある。

平均変位速度については、平成9年度に箱根ヶ崎での粘土層の堆積年代から求まる平均変位速度が、約0.25m/1,000年である。これは山崎(1978)が箱根ヶ崎で算出した平均変位速度(0.14〜0.27m/1,000年)とほぼ同じ値を示している。

また、平成10年度の矢川周辺で、青柳面を構成する青柳礫層の上面標高の鉛直変位量から0.12m/1,000年の値が得られており、山崎(1978)が矢川で算出した0.11〜0.18m/1,000年と同じ値である。