(1)既存研究の概要

@分布

立川断層は、松田・羽田野・星埜(1977)による関東平野と周辺地域 の空中写真判読と現地調査にもとづき、名栗川上流から南東方向の国立市青柳までの北西から南東方向にのびる全長約47kmの線状構造に対して命名された。松田ら(1977)によると立川断層の一般走向は北40°西、南西落ちである。山崎(1977,1978)は、立川断層についての詳細な検討を行い、立川断層の南東側延長部にあたる多摩丘陵には背面高度の不連続や顕著なリニアメントがみられないこと、国立市谷保の矢川付近で断層変位量が急速に減少することなどから、立川断層の南端を矢川ないしその南東の多摩川沖積低地付近とした。また、立川断層の北側延長部にある名栗断層は立川面相当の段丘を変位させていないことから、立川断層の北端を青梅市小曽木付近とし、立川断層の長さを約21kmとした。東郷ほか(1996)は多摩川右岸での遺跡現場で断層露頭を発見し、この断層露頭を立川断層の延長部とした。都市圏活断層図「八王子」(国土地理院)では、立川断層の南限をこの東郷ほか(1996)が示した断層露頭においている。

A活動履歴 

山崎(1976,1977,1978)は、断層沿いに発達する金子台面(下末吉面に対比:約13万年前)、武蔵野面(約8万年前)、立川面(約1.6万年前)、及び青柳面(約1.4万年前)がすべて断層変位をうけおり、各地形面での変位速度から最大平均変位速度を0.36m/1000年(断層中央部)とした。また、立川断層の最大単位変位量を約1.8mとし、活動間隔は約5,000年、想定される地震のマグニチュードを約7.1とした。

B断層の構造

山崎(1978)によれば、立川断層は北東側の地盤が南東側に対して相対的に隆起した逆断層である。一方、萩原(1989)は、重力探査の結果からこの断層が左横ずれ運動で生じたものと想定した。さらに東郷ほか (1996)は、多摩川南側での断層露頭(立川断層と報告)から、横ずれ変位を報告している。

C最新活動時期

立川断層は、厚い砂礫層に覆われていることから断層変形はとう曲帯となって現れ、地表部では地層を剪断する断層面の確認はほとんど望めない。このため、角田(1983)は立川断層が霞川を横切る位置では、断層活動により下流側が隆起することにより、上流側に湖沼堆積物が形成されると仮定し、湖沼堆積物の堆積開始時期を断層活動の時期と仮定し、立川断層の最新活動時期を約1,400年前と求めた。