(2)分析結果および考察

ここで使用する年代値は、補正14C年代である。

(1)青梅市藤橋地区ボーリング(97−1孔〜97−9孔)

表6−1−2に分析結果を示す。その結果、これらの堆積物は、年代測定結果から5つの年代に分けられる。つまり、1,500y.B.P以降、4,000〜6,000y.B.P.,9,500〜11,000y.B.P.,15,000〜19,500y.B.P.,24,000y.B.P.以前に分けられる。ただし、この中には古い年代を持つ植物片が混入する。しかし、これらの古い植物片は再堆積物である可能性があり、この年代を堆積年代と考えるのは危険があると考える。ここでは仮におおよその時代区分を示す。

この結果に従い、年代を指標に地層を区分して、霞川低地を横断する断面図を作成した(図6−1−1参照)。また各孔で出現する地層を年代ごとに区分した図を図6−1−2に示す。

対比線は、年代の異なる地層を詳細に観察し、地層境界となりうる不整合面をつなげた。図6−1−1では、6つの不整合面で区別される埋没谷が判別でき、各埋没谷は幅15〜20m程度,深さ1〜1.5m程度で、その谷の中には細レキからシルトよりなる堆積物がみられる。角田(1983),角田ほか(1988)と角田ほか(1994)の既存のトレンチで堆積物の年代が一致しなかったのは、このような埋没谷が多く存在することから当然であったと考えられる。

表6−1−2 分析一覧表(炭素同位体年代測定:ボーリング・青梅市藤橋地区)

図6−1−2 出現地層の年代対比図

(2)瑞穂町箱根ヶ崎地区(97−10孔)

コア観察の結果、97−10孔の粘土層は明瞭な地層境界が見られないため、比較的明瞭な色調の境界部および上方細粒化を示す堆積サイクル毎の植物片を中心に採取し、炭素同位体年代測定を実施した。分析結果を表6−1−3に示した。

砂層から粘土層に上方細粒化する箇所では22,000〜17,500y.B.P.の年代を示す。その上位の粘土層では、17,500〜1,650y.B.P.の年代値を示した。97−10−1では、下位の層準よりも古い5,120y.B.P.の年代値が得られたが、コア観察でもブロック状に挟むものであることから、二次堆積の植物片であると考えた。

表6−1−3 分析一覧表(炭素同位体年代測定:ボーリング・瑞穂町箱根ヶ崎地区)

(3)青梅市藤橋地区(トレンチA)

年代試料に関しては、各地層区分毎の上部,下部を中心に採取した。表6−1−4に、炭素同位体年代測定結果一覧表を示す。

各地層と年代結果を以下に示す。年代はいずれも、補正14C年代である。

新町レキ層       33,080±290〜29,800±200y.B.P.

砂層〜シルト層    29,800±200〜29,010±180y.B.P.

青灰色粘土層     28,120±170〜25,310±350y.B.P.

淡灰粘色土層      13,900± 50〜13,280±50y.B.P.

淡褐灰色砂質粘土層 14,980± 60〜 8,030±50y.B.P.

黒土層          5,740±100〜 2,970±50y.B.P.

青灰色粘土層と淡灰色粘土層の境界で、25,310±350〜13,900±50 y.B.P.の地層が欠如していることが明らかになった。

表6−1−4 分析一覧表(炭素同位体年代測定:トレンチA)

(4)青梅市藤橋地区(トレンチB)

年代試料に関しては、各地層区分毎の上部、下部を中心に採取した。表6−1−5に、炭素同位体年代測定結果一覧表を示す。

各地層と年代結果を以下に示す。新町レキ層から淡褐灰色砂質粘土層までは、トレンチAと同様であった。

一方、これらを不整合関係にある砂層および腐植質粘土層を以下に示す。年代はいずれも、補正14C年代である。

砂層        1,100±50〜1,010±50y.B.P.

腐植質粘土層  1,520±40〜1,040±40y.B.P.

ここでは、下位の砂層の方が、上位の腐植質粘土層より若い年代値が出た。当初、明瞭な境界があったため、両層間には整合的な時間的間隙があったと考えた。しかし、この年代の逆転は、このような考え方と矛盾する。

採取した炭質物の試料は、砂層では比較的大きな木片、粘土層では細片化した植物片および腐植物である。

また、トレンチAと同様、青灰色粘土層と淡灰色粘土層の境界で、25,310±350から13,900±50 y.B.P.の地層が欠如していることが明らかになった。

表6−1−5 分析一覧表(炭素同位体測定:トレンチB)