1−3−3 今後の問題点

今回の調査の結果、霞川低地で埋没谷中の堆積物が急速に堆積し始めた年代が、立川断層の活動時期を示しているとの仮説をたてた上で、調査の目的である最終活動時期と活動周期を推定することができた。

ただし、仮説の当否については、今回の調査結果からは判断できない。従って、今後は霞川低地で得られたデータを裏付けるような調査、もくしは仮説の当否を検討するための調査が必要になるものとみられるが、仮説を検討する調査はかなり大規模になると考えられるため、結局霞川低地以外で霞川低地のデータを裏付けるような調査を行うことが効果的である。

具体的には、箱根ヶ崎の狭山ヶ池付近で断層に直交する方向の断面上に多数のボーリングを配置し、年代の異なる粘土層の変化をとらえることにより、断層の活動性を把握する方法に可能性があると考える。この付近は立川断層の最も変位量の大きい部分に当たり、活動の代表であるとみなすことができる。年代測定についても、最上部は多少の改変の影響があるかもしれないが、閉塞した湿地であるため、再堆積の混入度合いは少ないものと考えられる。また、炭素同位体年代測定の結果を補足するため、帯磁率の測定を行ったうえで、火山灰の分析を実施することで年代の信頼性を向上することができる。

このような調査を行い、今回霞川低地での調査で明らかになった、埋谷堆積物の発生するサイクルと比較し、その結果を断層活動との関連を議論することが望まれる。

文献

松田博幸・波田野誠一(1975):関東平野西辺の線状構造.地理学会予稿集,8,76〜77.

山崎晴雄(1978):立川断層とその第四紀後期の運動.第四紀研究,16,231〜246.

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角田清美・鈴木毅彦・山懸耕太郎・貝塚爽平・今泉俊文・松田時彦・深谷元・土屋洋道(1988):立川断層の活動に伴って生じた古霞湖のトレンチ調査.活断層研究,5,71〜76.

角田清美・鹿島薫・鈴木毅彦・嶋本利彦・松田時彦(1994):東京都青梅市霞川低地の堆積過程と立川断層.活断層研究,12,30〜39.

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