(2)芝川断層

芝川断層は、入山断層と同様に入山断層系の主体をなす断層であり、第四紀をとおして活発に活動している断層である。

芝川断層の最近の活動は、約2万年以降に確実または推定される活動が4回認められる。最新の活動時期は約2,900〜4,500年前であり、再来間隔は約3,000〜4,000年と考えられる。

芝川町羽鮒付近では、平均変位速度と再来間隔から求まる単位変位量は約6〜9mであるが、芝川溶岩や古富士泥流堆積物の堆積面の標高差から求まる単位変位量を計算すると約3〜4mである。

芝川断層は、芝川町古田〜上柚野間の約7km間に認められるが、さらに北方は富士火山の溶岩流が表層部を厚く覆い、地表には認められなくなる。

入山断層と同様に芝川断層が活動した場合の発生しうる最大地震規模を、その長さ並びに単位変位量から前記(4−1、4−2)の式を用いて算出すると、

   ML=6.2、MD=7.5〜8.0

となり、想定される最大地震の規模は、断層の長さによるものに比べ、単位変位量から推定したものががかなり大きい値となる。

これは、前述したように断層の北方が富士山の溶岩流のため確認できず、断層の全長を把握できないためか、または、富士川河口断層帯は他の活断層とは違うプレート境界の活断層であり、通常の経験式があてはまらないためと考えられる。また、断層の長さに比べて単位変位量が大きいという特徴は、後述するように富士川河口断層帯全体の特徴である。

近年、活断層に対する予測・防災という観点から、松田がMatsuda(1981)および松田(1995a)などで、「要注意断層」と「安全断層」という概念を提唱している。

図4−1−2に「要注意断層」の概念図を示す。

松田(1995a)では、「要注意断層」とは平均再来間隔Rに対して、最新活動時期から現在までの経過時間tの比Eが0.5以上の活断層をいい、反対に0.5以下の活断層は「安全断層」としている。

芝川断層では、R=約3,500年、t=約2,900〜4,500年であるから、E=0.83〜1.29となり、芝川断層は「要注意断層」となる。

なお、入山断層も再来間隔は不明であるが、最新活動時期から少なくとも約1万年以上経過しており、今後活動するとすれば、現在の入山断層も「要注意断層」であると推定される。

図4−1−3にMatsuda(1981)に示される内陸の「要注意断層」を示す。

この中に1995年兵庫県南部地震の震源となった野島断層が「有馬−高槻−六甲断層帯」として、「活動期が近い要注意断層」と指摘されている。また、富士川河口断層帯も「富士川断層帯」という名称で、同様に「活動期が近い要注意断層」として図示されている。

図4−1−3 内陸の「要注意断層」      [松田(1995a)から引用]

図4−1−2 「要注意断層」の概念図     [松田(1995a)から引用]