(11)由比・蒲原沖

現在まで、陸上の活断層についてはかなりの調査・研究がされており、断層の位置やその性状についても把握されつつある。また、海底活断層の調査も海上保安庁水路部(1978b)に図示されている。

しかし、海上保安庁水路部(1978)は、陸上活断層と海底活断層の連続については明記しておらず、その位置や連続性が必ずしも明確になっているとは言えない。

そこで、陸上部と海底部との連続性を把握することを目的として、沿岸部を中心に海上音波探査(約9km×3測線)を実施した。

(1)海上音波探査結果

海上音波探査は、シングルチャンネルとマルチチャンネルで、由比町沖〜富士川河口の沖合の約9kmで行った。測線は3測線(沖合よりそれぞれA測線、B測線、C−D測線)とした。

図3−2−44にマルチチャンネルの測線位置図を、図3−2−45にマルチチャンネル解析断面図を示す。また、図3−2−46にシングルチャンネルの測線位置図を、図3−2−47にシングルチャンネル解析断面図を示す。

なお、各測線毎のデータ記録例や解析処理例を別冊資料集にまとめて示すとともに、解析結果図(縮尺1/5,000、縦:横=1:1、時間断面および深度断面)を付図として添付した。

調査地は海底地形の起伏が大きいため、両デ−タとも回折波が多く認められ、全体に浅部の構造しか判読できない。

図3−2−48にマルチチャンネルの解析断面図から推定した地質構造図を示す。

解析断面図からは明瞭な断層の反射面が認められないが、地質構造を反映した反射面の不連続な部分を断層と推定した。

各測線状況をまとめると以下のとおりである。

図3−2−49に海底断層の推定位置を示す。

図3−2−44 マルチチャンネル測線位置図(縮尺1/25,000)

図3−2−45 マルチチャンネル解析結果図

図3−2−46 シングルチャンネル測線位置図(縮尺1/25,000)

図3−2−47 シングルチャンネル解析結果図

A測線(沖合約2km)

海底は深度約200〜400mと深く、かつ海底の起伏が顕著であり、地質構造を表す反射面はほとんど認められない。また、海底谷中に堆積物が認められる。

B測線(沖合約1.5km)

この測線では起伏が激しく、所々で埋没谷や埋没段丘が認められる。善福寺断層付近では反射面の傾向から地層が撓曲状を呈していると推定される。

C−D測線(沖合約1km)

この測線付近の海底地形は、深度約50mの海食台状の平坦な地形を呈しており、比較的深部まで反射面が認められる。

陸上部の地質構造とほぼ同じような地質構造であると推定され、入山断層、善福寺断層と入山瀬断層とも海底まで連続していると考えられる。

入山瀬断層は、この測線では陸上での位置からやや東に湾曲しており、東側隆起の派生断層を伴うと推定される。

入山瀬断層の両側の海食台状の地形面にはわずかながら東側隆起の傾動がみられ、入山瀬断層で変位していると推定される。なお、入山断層や善福寺断層では海底面の高度差は認められない。

(2)まとめ

海上音波探査の結果、陸上活断層と海底活断層の連続が把握された。

入山断層は、陸上で確認されている位置のほぼ延長方向に認められた海底活断層に連続すると推定される。海上保安庁水路部(1978b)が図示した長さを含めると、入山断層の海域での長さは約5kmと推定される。

善福寺断層は、最も海岸線に近い測線では断層として認められるが、B測線では撓曲状であり、この付近より以南には連続しないと推定される。

入山瀬断層は、海底では地質調査所(1996)に示された位置からやや東に湾曲し、陸上の延長付近に東側隆起の派生断層が認められる。

図3−2−48 推定地質構造図

図3−2−49 海域推定断層位置図(縮尺1/25,000)