(4)解釈

今回の調査では、通常行われるトータルγ線を測定するのではなくは、分布する地層が中・古生層堆積岩類(美濃帯)及び東海層群であることから、短命元素であるラドン系列元素の崩壊生成物であるビスマスからの放射線量をパラメータとして断層及び破砕帯の抽出を試みることとした。

調査前の判断では、既存文献調査や地形調査により横ずれ成分に卓越していると考えられていたことから、一つの断層面が繰り返し活動していたと考え、ラドンエマネーション量に上向きのピークが出現すると予測していた。

測定結果では、ラドンエマネーション量がプラスを示す放射能の非平衡地点が出現した。このうち、ラドンエマネーション量が100(カウント)以上を観測した地点を放射能の非平衡地点と考えることとした。

非平衡のタイプは、点のピークと幅を持ったピークの二通りが現れた。

これを解釈すれば、前者は、大規模な破砕帯を伴わない断層もしくは破砕幅の小さな断層であることが想定させる。

一方、後者の場合、大規模な破砕帯が推定される。

地質調査の結果では、県境地区及び玉地区で、(地質)境界断層となる北傾斜の逆断層が発見または推定され、衝上した中・古生層の大規模な破砕帯が確認されている。このほかに、大規模な破砕帯を形成している可能性のある地域は2箇所あり、丸山閉塞丘北側の地域と秋葉閉塞丘南側の地域である。ラドンエマネーション量が幅の広いプラスのピークを示す箇所は、これと同様な規模の大規模な破砕帯の存在を示している可能性がある。

その後のボーリング調査(B−3孔)や丸山Aトレンチ,丸山Bトレンチでは、規模の大きな中・古生層(美濃帯)の破砕帯が確認された。これらの内、B−3ボーリングや丸山Aトレンチの周辺ではラドンエマネーション量のプラスのピークを検出している。しかし、大きな破砕帯の確認された丸山Bトレンチ周辺では、ラドンエマネーション量100(カウント)以上プラスのピークを検出することはできなかった。このことは、測線上での被覆する地層(段丘堆積物)の有無により、観測成果に差がでた可能性もあるが、積極的な説明とはなり得ない。

したがって、今回実施した放射能探査の結果を断層位置を特定できる積極的な根拠として使用することはできないと考え、傍証の一つとして扱うこととした。

しかし、核種の寿命が短いラドン系元素の崩壊生成物であるビスマスからの放射線が多く観測されたことは事実であり、地質学的な考察によりこの原因が説明できれば、有効な調査方法であると考えられる。特に、地質調査の予察には有効であると考えられる。

図2−3−4−1 放射能探査の結果

図2−3−4−2 放射能探査の結果得られた放射能の非平衡地点