(6)解釈

解析には、見掛比抵抗値で表示した比抵抗階級分布断面図とインバージョン2次元解析比抵抗断面図の2種の断面図を作図しているが、解釈にはインバージョン2次元解析により作成した比抵抗断面図を用いることとする。

以下に測線ごとの解釈断面図及び解釈を示す。

@ E−1測線

・比抵抗値が300Ω・m以下と全体に低いことが特徴としてあげられる。

・比抵抗分布は、地表付近では笹尾山トンネルを堺にして、南側に比抵抗が相対的に高い部分、北側に相対的に低い部分が層状分布している。その下位では、測線南端とトンネル付近で低く、そのあいだと北側は高くなっている。

・地表付近の、トンネル南側の比抵抗が高い部分は段丘堆積物に、また、トンネルより北側側の比抵抗がやや低い部分は(道路)盛土に相当すると考えられる。測線北端の高比抵抗部分は地表に中・古生層(美濃帯)が露出していることから中・古生層(美濃帯)と考えられる。

下位の比抵抗分布は、地形地質調査で観察した露頭性状から、相対的に高比抵抗が中・古生層(美濃帯),低比抵抗が東海層群と考えられる。また、地形地質調査による地質分布からは、測線100m付近に地層境界が推定されるため、これより北側は中・古生層(美濃帯)が分布していると考えられる。しかし、トンネル坑口の既存ボーリングでは、深度20m付近まで礫混じり粘性土,99mまで高有機質土を記載してあり、想定した地質構造とは異なる。

・低比抵抗と高比抵抗の直線的な境界は4本存在し、内中央部の2本は地表で1箇所に収斂する。

・地形地質調査により測線の100m付近にF−3,300m付近にF−1断層が推定でき、比抵抗断面図にも70m,300m付近にそれに相当すると判断される変化が見られる。全体的に比抵抗値が低いため、何れも明瞭とは言えないが断層を推定する。

トンネル下位に分布する低比抵抗ゾーンが既存ボーリングで記載してあるような高有機質土であった場合、地盤の強度,構造物の基礎構造の観点から坑口の施工は極めて困難である。また、礫混じり粘性土の部分が高比抵抗を示すのは異常であると考えられる。コアの記載(礫混じり粘性土,高有機質土)をそれぞれ中・古生層(美濃帯)の断層破砕帯,断層粘土化帯と解釈すれば、低比抵抗ゾーンの分布が説明できる。したがって、低比抵抗ゾーンを断層粘土化帯と解釈し、粘土化帯の両側に断層を推定する。

図2−3−3−8

A E−2測線

・比抵抗値が300Ω・m以下と全体に低いことが特徴としてあげられる。

・比抵抗分布は、地形面と平行な明瞭な水平成層構造を持ち、比抵抗値の違いにより、大きくみて3層に区分できる。地表から順に、相対的な高比抵抗(第一層),相対的な低比抵抗(第二層),再び高比抵抗になる傾向(第三層),である。

・第一層は段丘堆積物,第二層は東海層群,第三層以深は中・古生層(美濃帯)に相当すると考えられる。第二層と第三層の境界は比抵抗値に差がないため非常に不明瞭である。

・地形地質調査において、測線と斜交したF−2断層が測線150m付近に推定されたが、比抵抗断面図において80m付近に第二層の低比抵抗がが第一層中に凸型に分布している。しかし第二層・第三層の比抵抗分布は測線南側と北側とを比較しても明瞭な差は認められない。したがって、高密度電気探査結果では断層の推定は困難である。尚この位置には、電柱が存在しており電柱工事に伴う地層の乱れによる影響も考えられ、堆積構造が断層により乱されているとは断定できない。また、比抵抗値に差がない地層が断層接している場合にも、電気探査では検出が困難である。

図2−3−3−9

B E−3測線

・比抵抗値が300Ω・m以下と全体に低いことが特徴としてあげられる。

・比抵抗分布は、測線の0〜120m付近の上部と170m付近から終点側に比抵抗が相対的に高く、0〜170m付近の下部では相対的に低くなっている。

・地形地質調査の結果では、0〜120m付近の上部の比抵抗が高い部分は段丘堆積物、その下部の比抵抗が低い部分は東海層群に相当すると考えられる。170〜230m付近の地表付近の比抵抗が高い部分は段丘堆積物に、その下部と230m付近から北側は中・古生層(美濃帯)に相当すると考えられる。

・低比抵抗と高比抵抗の直線的な境界は、測線130m付近、170m付近に存在している。地形地質調査において測線の180m付近にF−1断層が推定されており、170m付近の直線的な境界はF−1に対応すると考えられる。また、測線150m付近には、F−2断層が推定されており、130m付近の直線的な境界はF−2に対応すると考えられる。

一方、地形地質調査により測線70m付近に推定されたF−2断層は、上位の段丘礫層と下位の東海層群が、ともに分断されていないため推定が困難である。また、比抵抗値に差がない地層が断層接している場合にも、電気探査では検出が困難である。

図2−3−3−9