(1)反射法探査

@ 目的

反射法探査は、地層境界の持つ音響インピーダンス特性を利用し反射面の分布を把握することにより、関ヶ原断層(F−1・F−2)の位置・変位量および地質構造を明らかにすること,また伏在断層の有無等を明らかにすること,を目的として実施した。このほかにも、防災上の基礎資料となる関ヶ原市街地下の速度構造を明らかにすることも目的としている。

A 探査仕様

反射法探査位置は、西側より笹尾山地区(R−1),秋葉・丸山地区(R−2),秋葉・丸山地区の東側(R−3)の3測線とし、測線は関ヶ原市街地北側の山地から低地へ南北方向の測線とした。探査仕様は10m間隔起震(震源装置:スイープ震源”ミニバイブ”),5m間隔受振の浅層反射仕様とし、測線長は、それぞれ1660m,2220m,865m、探査深度は何れも500m程度とした。R−2測線では、北側山地の測線では、測線を直線的に確保するため、重錐落下装置”ドロップヒッター”を震源とした。

また、R−1測線上の低地部では、測線西側に位置する天満山及び北側の残丘が中・古生層(美濃帯)よりなり、この北側にF−4断層と同一センス(相対的に南側隆起)の断層が推定できるため、低位段丘堆積以降の活動性評価を目的とした極浅層仕様(2m間隔起震(震源装置:ドロップヒッター),2m間隔受振)の反射法探査を実施した(RS−1:測線長346m,探査深度100m程度)。

B 調査結果

成果である解釈図を図1−3−3−2図1−3−3−5に示す。

反射法探査の結果、R−1〜R−3の浅層反射法測線において、系統的な反射面が確認でき、その内、重合速度とそのギャップから東海層群の基底(基盤である中・古生層(美濃帯)の上面)と考えられる反射面の食い違いと東海層群の堆積構造と考えられる反射面の食い違いや変形から、伏在断層が測線毎に3〜9条推定された。

測線北側の山地前縁の推定断層は何れも北傾斜の逆断層を示し、東海層群の基底面と推定された反射面のくいちがい量は垂直変位量で90〜150m程度である。いずれの測線でもこの推定断層の南側で反射面の北傾斜が認められ、東海層群が断層による変形を受けたものと推定される。伏在断層による反射面の食い違いや変形は、地表下10m〜40m程度まで認められるが、探査仕様が浅層仕様であることや段丘堆積物と東海層群の境界面の形状が不明であることから、どの地層まで断層による変位や変形が及んでいるかは不明である。

反射法の結果からは、東海層群の堆積構造と推定される反射面に、変形の累積性が認められないことから、東海層群の堆積以降に断層が変位し、山地を形成している中・古生層(美濃帯)を隆起させたものと考えられる。

地形地質調査で推定された関ヶ原断層F−1・F−3の左横ズレ変位量と反射法で伏在が推定された断層の垂直変位量の比較が困難であるため、また、どちらも変位基準の形成年代が不明なため、どちらの動きが主であるか判断ができない。

R−2測線の南端の推定断層は南側隆起の断層であり、垂直変位量が30m程度である。測線北側の山際前面の断層が逆断層でありセンスが異なることを考慮すると、活動の時期が異なると考えられるが、その時期も測線北側の山地前縁の断層と同様に、東海層群堆積以降と考えられる。このセンスの断層は、R−1測線の更に南側にも中・古生層(美濃帯)からなる山地が存在することから、測線南側の山地前縁にも存在している可能性がある。

R−3測線の南端の推定断層は北側隆起の逆断層であり、垂直変位量が80m程度である。この推定断層もR−2測線の南端の推定断層同様に、山地前縁の推定断層とセンスが異なるが、両者のセンスが同一でないため連続性等は不明である。また、北側の山地前縁の推定断層との関係も不明である。

浅層反射法で推定される伏在断層は、いずれも東海層群基底と考えられる反射面を変形させているものの、地形調査で低位段丘面上に変位地形が認められないことから、低位段丘堆積以降に活動していないと考えられる。

測線北側の山地前縁の断層の活動性を評価するためには、断層両側に分布する東海層群の層序比較を行う必要がある。ただし、B−1ボーリングの結果、及び反射法での東海層群の弾性波速度が速いことから、礫質であることが推測される。そのため、フィショントラック年代測定や微化石分析の試料となる火山灰や細粒分に乏しい地層と推定され、評価が困難と予測される。また、極浅層仕様の反射法探査及びボーリング調査を行ったとしても、反射法が有効な測線上に分布する更新世後期の堆積物に断層変位地形が認められないことから、断層の活動性評価は困難であると考えられる。

地形地質調査で推定されたF−1・F−2・F−3断層は、反射法でも中・古生層(美濃帯)中の反射面の食い違いや変形で推定された。ただし、中・古生層(美濃帯)の中の反射面の実体は不明である。

R−1測線上の低地部で実施した極浅層反射RS−1では、3条の断層が推定された。その内、南側の2条は、浅層反射結果で推定された1条の断層位置と良く一致し、断層の構造も一致した。したがって、浅層反射で推定された1条が分解能をあげた測定仕様を用いることにより、2条の断層として読みとれたと考えられる。北側の断層については、極浅層反射結果を把握した上でR−1の反射記録を解釈すれば、R−1でも識別可能であるが、南側断層を越えて北側断層が地下へ連続することはなく、南側断層が主な断層であると考えられる。さらに、RS−1では、表層付近の反射面の連続性が良く、この反射面が東海層群の堆積構造を反映していると考えられ、堆積構造の形状から東海層群堆積以降の断層活動が推定される。

また、地形地質調査により玉地区で確認された南側隆起の断層は、極浅層反射測線上では確認できなかった。

図1−3−3−2 浅層反射R−1測線解釈図

図1−3−3−3 浅層反射R−2測線解釈図

図1−3−3−4 浅層反射R−3測線解釈図

図1−3−3−5 極浅層反射RS−1測線解釈図