各種の分析結果を以下にまとめる。
(1)炭素年代測定
測定結果を表5−3−1に示す。
表5−3−1 放射性炭素年代測定結果一覧表
おおむね矛盾のない結果として得られているが、No.2地点における結果には上下関係に逆転が見られる。この地点においては1420−1610cal.yBPに測定された下位試料(OKB−02−2)の上位に6世紀初頭(1450yBP)に噴出したとされる榛名二ツ岳渋川火山灰の濃集部が見られていることより、上位試料(OKB−02−1)が示した1920−2325cal.yBPは、2次的な堆積の測定値の可能性があると考えられる。また、No.1地点の下位試料(OKB−012)が示した5750−5830cal.yBPは、反射記録およびNo.2地点との地層の連続性を考えるとかなり古い値であることより、地質断面の作成に際しては参考値として扱った。
(2)火山灰分析
分析結果を表5−3−2に示す。
表に示すように、No.1、2地点において浅間B火山灰(As−B)および榛名二ツ岳渋川火山灰(Hr−FA)などの起源物質が検出されている。それぞれ西暦1108年と6世紀初頭の噴出と考えられている。しかし、いずれの試料も深度1.8m以浅であり、前述したように人工改変により攪乱されている可能性が大きいが、堆積時間面の推定に際して有用な情報となる。
No.2、3地点では、13,000〜14,000yBPころの噴出とされている浅間板鼻黄色火山灰(As−YP)を起源とする可能性のある由来物が検出されている。いずれの試料においても微量であることより2次堆積などの上方への拡散による混入と判断される。
表5−3−2 火山灰分析結果一覧表
(3)花粉分析
分析結果は表5−3−3に示すとおりであり、解析を行うために計数の結果に基づいて、花粉化石組成図を図5−3−1のように作成した。
出現率は、木本花粉は木本花粉の合計個体数を、草本花粉とシダ植物胞子は花粉・胞子の合計個体数をそれぞれ基数とした百分率である。図表において複数の種類をハイフォン(−)で結んだものは、その間の区別が明確でないものである。
深度2.23m以深のNo.5〜No.28試料では花粉化石を全く産出しないか、産出しても非常に少量である。これらの試料のうち、No.5〜No.14試料とNo.20〜No.28試料は褐色〜黄褐色を呈した粘土混じり砂礫あるいはシルトであり、堆積物が風化作用を受けたために花粉化石が分解・消失した可能性が高いものと推定される。しかし、No.15〜No.19試料は緑灰〜青灰色粘土であり、とくに風化作用を強く受けた痕跡が認められず、花粉化石の消失についての原因は不明である。
また、深度1.3m以浅のNo.1〜No.4試料では、マツ属複維管束亜属、スギ属、コナラ亜属、アカガシ亜属、イネ科などが産出する特徴から、完新世の花粉群集であるDiploxylon帯とQuercus帯の特徴と一致し、対比される。しかし、本調査地点では各帯の上下関係が逆転しており、地層の攪乱による可能性が高いと判断される。
(4)珪藻化石
第1、第2粘土層を対象として8試料について分析を行ったが、いずれの試料についても全く珪藻化石は検出されなかった。
一般的には、珪藻は生育時の生産量が多く、殻が珪質であるために陸上の堆積物にも多く認められるが、これらの試料では珪藻化石が検出されなかったため、珪藻の生態性に基づいた堆積環境の推定を行うことはできなかった。ただし、珪藻の破片すら認められないことは、堆積後に珪藻の殻が分解消失した可能性が考えられる。珪藻の殻は、埋没後に堆積物によって完全に密封されて大気に触れない状態であれば、地質時代を通してかなり長い時間でも保存される。しかし、死後、大気に触れやすい環境である場合(好気的環境)は、殻の分解が促進され、比較的短期間に消失することが知られている。したがって、ここに分析した試料に関しても、堆積環境が好気的であった可能性があるが、花粉化石と同様に詳細な要因については明確でない。
表5−3−3 花粉分析結果一覧表[No.1地点]
図5−3−1 花粉化石組成図
(5)砂粒組成分析
分析は深度1.3m以浅の表層部と、珪藻分析で対象とした同じ2枚の粘土層について実施した。表層試料には浅間起源と思われる軽石がコア観察時に認められており、この軽石の検出・同定を行った。粘土層については、火山灰起源か否かの確認を主目的として分析を行った。
分析結果を表5−3−4に示す。
表層の4試料について分析した結果、発泡のやや不良な淡灰褐色の軽石が検出され、他に暗灰色緻密な安山岩質岩片に富み、斜方輝石などが確認された。これらの特徴より、ここに検出された軽石は浅間B火山灰(As−B)の特徴に類似し、同定できると判断される。なお、軽石の産状は深度0.76mでいったん極微量となるものの深度1.30mでは再び含有量が増加する。
粘土層の12試料について分析した結果、上位の青灰色粘土層に含まれる砂粒は、細粒で淘汰良く、粒子の角もとれている。また下位の黄褐色粘土層は上位の粘土層に比べて粗粒分が多く、淘汰はやや悪くなるが、円磨は同程度かやや強めに受けている試料である。砂粒の組成は、軽鉱物や岩片を主としており、火山ガラスや軽石などは検出されず、含まれる重鉱物も黒雲母を除けばほとんどの試料で少量であった。その中で深度27.4mに斜方輝石が多く認められたが、いずれの粘土層も火山灰起源と判断されるものではないと考えられる。
(6)礫種構成分析
第1〜3礫層で行った礫種構成分析の結果をまとめると、表5−3−5のとおりであり、深度方向における変化を図5−3−2に示す。
これらの結果より、構成礫に見られる特徴を以下にまとめる。
深度4m試料の石英閃緑岩礫:石英、斜長石、普通角閃石、黒雲母からなり、普通角閃石、黒雲母は変質して緑泥石、アクチノ閃石に置換しているものが多い。長瀞町金沢の石英閃緑岩体のものと比較したとき、構成鉱物は類似しているが、金沢のものは変質していない。
深度4m試料の安山岩礫:そのうち1個は普通角閃石−シソ輝石安山岩で、斑晶(普通輝石、シソ輝石、斜長石、石英)と石基との区別がはっきりしている。変質していないことから、群馬県の第四紀の火山活動によるものと考えられる。
深度6m試料の緑色岩礫:変成を受けた玄武岩と考えられる。斜長石の斑晶が残り、アクチノ閃石が多く見られる。
深度21m試料の緑色岩礫:変成を受けた斑レイ岩と考えられる。斜長石と普通輝石からなる。
以上 鈴木禎一教諭による
これらの分析結果をもとに、埼玉大学角田史雄教授は、以下のような見解を述べた。
”深度6.1〜8.2mを境にして、利根川水系に由来する新鮮な安山岩礫と結晶片岩礫とが含まれる上位層と、それらが含まれない下位層とに分けられる。上位層の礫種構成は、現在の利根川流域、とくに No.1地点に礫を運び込んだと考えられる小山川流域の現河床面ならびに立川面の段丘構成層のそれとほぼ同じであるので、深度6.1m以浅を占める地層は完新統の可能性が高い。これに対して、深度8m以深の構成層中には上記の安山岩礫も結晶片岩礫も認められず、先新第三系である秩父系のチャートや砂岩のみが目立つ。このような礫種構成は小山川水系の立川面より新しい段丘構成層には認められないので、深度8m以深の地層は、先立川期、とくに武蔵野期あるいは下末吉期に堆積し、小山川上流域の上武山地ないし関東山地から供給された砕屑岩類からなる上部更新統と考えられる。しかし、結晶片岩礫は、礫層の基質中にアクチノ閃石の砂粒として含まれていることもあるので、その有無については、砂粒解析などの検討を要する。”