2−1−3 遺跡調査による地震記録

本調査地周辺地域の埼玉・群馬両県の遺跡発掘調査において、噴砂や地割れなどのような地震活動によると考えられる痕跡が、利根川や荒川などの河川低地にある遺跡を中心に確認されている。これらは活断層系との関係で見れば、関東北西縁断層系の前縁に位置する深谷断層との関係が深いと見られるが、噴砂等の液状化履歴は、表層における軟弱地盤の種類と密接に関係するため、断層活動との直接的な関係は特定されがたいが、地震活動の大局的な傾向を把握することができる。これらの主なものを、下記の文献(*1をもとに図示すると図2−7となる。また、ここに示した各地震痕跡の性状や、推定される地震活動時期をまとめると表2−1のとおりである。ここに示されるように、この地域における噴砂等の地震痕跡は、その多くが9世紀ころに集中し、818年あるいは878年に発生したとされる古代地震による可能性が大きいといえる。また、群馬県内の赤城山麓では、地震痕跡として地割れが多く記録されているが、地震動そのものによる地盤変状か、地すべり等の副次的な変状かは、詳細な検討が必要であろう。なお、図2−7および表2−1における遺跡番号の記号は、Sが埼玉県、Gが群馬県を示す。

図2−7 埼玉・群馬両県の遺跡調査による地震痕跡位置

(*1埋文関係救援連絡会議・埋蔵文化財研究会(1996):発掘された地震痕跡−埼玉県および群馬県−,pp.155−20

表2−1 埼玉・群馬両県の遺跡調査による地震痕跡記録一覧表