1 概要

平成7年1月17日の兵庫県南部地震を契機として、地震防災対策特別措置法が施工され、直下型地震の震源である活断層の活動性の詳細な検討が必要とされ、各地で活断層に関する調査が進められている。

埼玉県では同法に基づき、首都圏直下型地震の震源の一つとして指摘されている深谷断層について地形調査・物理探査・ボーリング調査・理学的分析等を行うことによって、その性状・活動度・活動履歴等を明らかにし、地震危険度評価および地震防災に関する基礎資料とすることを目的にし、本調査を計画・実施したものである。

調査地域は、深谷市から本庄に至る延長25km、幅2kmの範囲である。

深谷断層は、埼玉県の中央北部、関東平野の北西縁に位置する。このため付近には、先第三紀層の基盤岩を覆って厚い新しい半固結〜未固結の堆積物が厚く分布しており、山間部や、丘陵地縁辺部など、基盤の変位が直接地表に出現するとは限らない。このことは、阪神大震災において大きな被害を被った神戸市内において、地下の断層の変位が必ずしも地表に現れていないのも、基盤を覆った新しい堆積物に原因するところが大きいことからも明らかである。

一般にその位置が、地形・地質分布や、過去の地震断層として確定されている活断層に関しては、直接トレンチ等による断層の観察により変位を与えた地層の年代測定などによって、その活動度、活動時期を特定し、再来周期の推定をおこなうことが多い。しかし、深谷断層のようにB級で比較的活動度が低く、かつ厚い堆積層で覆われた平野部に分布する断層は、断層の位置を特定することが困難であり、最初からトレンチ調査をすることは困難である。

深谷断層は、地形的には撓曲により特徴付けられ、断層の性状を把握するためには、ある程度の範囲において地下構造を明らかにすることが先決である。現在、反射法地震探査が地下構造を明らかにするほとんど唯一の方法として採用されている。このため、本調査では、想定されている深谷断層を横断する形で2測線の反射法地震探査を実施することとした。

一方、反射法地震探査は、変位量が小さい、特に表層部の地質状況については、その分解能等から探査深度に限界がある。従って、限定される深谷断層の下盤側に、オールコアボーリングを実施し、反射断面とボーリングコアとの層序の対比を行うと共に、ボーリングコアの堆積年代を設定できるよう、古地磁気の測定、テフラの分析を併せて実施した。

本調査は、下記の学識経験者からなる地域活断層調査委員会を設置し、その指導の下に実施した。

〈埼玉県活断層調査委員会〉

委員長 :堀口萬吉(埼玉大学名誉教授)

副委員長:角田史雄(埼玉大学工学部教授)

    :山崎晴雄(東京都立大学大学院理学研究科教授)

    :菊地隆男(東京都立大学大学院理学研究科助教授)

    :纐纈一起(東京大学地震研究所助教授)

    :杉山雄一(通産省工業技術院地質調査所 地震地質部活断層研究室長)

    :遠藤秀典(通産省工業技術院地質調査所 環境地質部環境地質研究室長)

調査担当

(自治体担当者)

埼玉県環境生活部  防災局長    村松義規

    消防防災    課長       権田富久

              主幹       菊地 茂

              専門調査員  村岡 徹

              主査       島田一正

              主事       小沢きよみ

本調査は、前半、後半に、2分割して行った。、前半では主に、深谷断層リニアメント付近における地形・地質調査、物理探査、後半では主にボーリング調査とその分析を行った。それらの概要の詳細を以下に示す(前半はその1、後半はその2)。