3−3−1 反射法結果と既存資料との総合解析

反射法解釈結果(図3−2−17)と既存資料とを比較検討する。

本測線中央で基盤深度は約3400mを示し、西に傾斜して西端で深度3600mに達している。笠原ほか(1995)のKAN−94(図3−1−11)では、基盤は「川越ドーム構造」の南側で急激に深度を増し、測線南端で深度約3300mを示す。この延長部が本調査測線の中央部と交差するが、両者の深度は良く一致している。本測線では、この基盤は測線東側で不鮮明になるが(高ノイズ環境と発震エネルギの制限のため)、小さな凹凸を持ちながら西に傾斜している。駒沢(1985)の重力結果とは若干の違いが認められる。鈴木(1996)による基盤構造(図3−1−6

と比較すると、基盤深度は500mほど深く、さらに沈降中心もより西方に位置しているようである。

笠原ほか(1993,1994)や遠藤ほか(1997)の反射法結果では、「新編日本の活断層(1991)」で示された荒川断層推定位置付近では、断層や撓曲を示唆する顕著な変形は認められない。

ただし、遠藤ほかは、この荒川断層推定位置よりも3〜5km西に、第四紀層の傾斜変化構造の存在を指摘した(図3−1−5)。これは大宮台地の西縁でなく武蔵野台地の北東縁に対応し、荒川の西岸に位置する。一方、この傾斜変化部は笠原(1994)のKAN−93では認められないが、荒川低地南部での調査が行われていないため、その延長については良く分からなかった。本反射法測線位置はこれらをもとに、この傾斜変化部の南方への追跡を主目的として設定された。川越ドーム構造の北側で認められた傾斜変化部に対応するような事象は本反射法測線では認められず、この傾斜変化部がドーム構造の南側までには延長していないことが確認された。

本反射記録においては、三浦層群は基盤上面に斜交している。地層は深度2500m付近でほぼ平坦となり、より浅くなるに従い東傾斜を強くしている。図3−1−14−2の武蔵野線沿いのボーリング地質断面では、更新世の砂礫層は緩やかな東傾斜を示しており、反射記録と調和的である。

ボーリングデータの解析では、いくつかの地層の不連続は認められるが、これらは埋没谷を表わしている可能性が高く、積極的に断層の存在を示す事象は認められなかった。