3−2−8 処理結果

データ処理の結果得られた最終記録断面図上での反射イベントの特徴を、時間マイグレーション記録(図3−2−13)を中心にして、処理の過程から得られた情報も含め列挙した。なお、構造変化を捉え易くするために、図3−2−13の鉛直方向を拡大し、水平方向を縮小した記録を図3−2−15に示す。

・全般的に見て往復走時1.8秒付近までの浅部には、ほぼ平行に延びる連続性の良い反射イベントが多く見られる。特に1.2秒から1.6秒付近にかけての反射波は振幅が大きく、部分的に連続性が悪くなるが、ほぼ測線全域にわたって認められる。これら浅部の反射波は、測線中央部付近から東側でわずかに傾斜して下がっている。CDP200付近から傾斜がやや急になっているが、これは測線の屈曲によるものと考えられる。

・2秒付近までの反射面は緩やかに東方に深度を増しているが、この傾斜は浅部ほど大きくなっている。また、2秒以深では、反射面の連続性が一般に良くないため明瞭ではないが、深くなるにつれて西傾斜を示す傾向が見られる。

・測線の中央部付近から西側にかけて(CDP200〜CDP638)往復走時2.5秒〜2.7秒の間に認められるやや振幅の大きい反射イベントは、既往反射記録(笠原ほか(1995)のKAN−94測線)との対比結果や、この上を覆う反射イベントとその傾斜を異にすること、その深度付近の区間速度等から考えて、基盤上面からの反射波と考えられる。この反射イベントは西側に向かって傾斜している。これは、浅部の反射波が東側に向かってわずかに傾斜している傾向とは相反している。CDP1〜200までの測線東部では基盤からの反射波が不明瞭となる。

・CDP270〜CDP350にかけての荒川の河川敷付近では、十分な発震点の確保が難しかったため、1.0秒付近までの浅部の記録が不明瞭になっている。

・測線の中央部より東側のCDP200以東で、2秒以深の深部反射波が不明瞭となっている。

これは、測線が国道298号線沿いに位置し、受振点のノイズレベルが高かったことに加えて荒川付近で発震点が十分確保できなかった上、荒川西側では周辺への影響を抑えるためにバイブレータの台数を2台とせざるを得なかったこと等による震源エネルギの低下という悪条件が重なったためと考えられる。

・浅層のボーリング調査データによれば本測線付近の地下水位は、多少変動はあるものの地表面下5m以浅であり、Time−Term法による表層構造解析の結果から得られた表層基底面(図3−2−9)は地下水位面よりも更に深い速度境界を表している。図3−1−14−1図3−1−14−2図3−1−14−3図3−1−14−4のボーリング地質断面と比較すれば、更新統或いは七号地層の砂礫層上面に対応していると考えられる。

・深度記録においても、基本的に、上に述べた時間断面上の特徴と同様の傾向を示している。基盤からの反射は、CDP200付近で深度3200mを示し、若干の凹凸を有しながら西に傾斜し、測線西端で3600mに達している。