3−2−7 反射法データ処理・解析

反射法地震探査データ処理は、反射波以外のノイズを含んだフィールド記録から反射波の信号のみを抽出し、各反射波の反射面を測線に沿ってイメージ化して地下断面図を得ることを目的として実施される。

調査現場において磁気テープへ収録された地震記録データは、IBM RS6000SPコンピューターシステムと反射法解析ソフトウェア Super−X(共に地球科学総合研究所所有)を用いて図3−2−6に示すデータ処理流れ図に従って処理・解析がなされた。

[1] フォーマット変換及びトレースエディット

フィールドテープに記録されたデータのフォーマット変換を行うと共に不良な記録のトレースエディットを行った。

[2] トレースヘッダーへの測線情報の入力

各トレースデータに対し、発震点及び受振点の座標、標高値、オフセット距離、基準面標高値等の測線情報を入力した。図3−2−7に発震点・受振点の位置を、図3−2−8 にCDP位置をそれぞれ標示した(スケールは25,000分の1)。

[3] 屈折波初動解析

改良型タイムターム法による本観測記録の屈折波初動解析を行い、表層部の構造を求めた。解析の結果得られたタイムターム値、表層速度構造を図3−2−9 に示す。表層速度(Vw)は、ショット記録上での初動の見掛け速度から700m/secとした。また、この表層速度に関しては、後述の共通反射点重合の後で、各CDPから等距離にあるニアトレースを抽出し初動到達時間を比較した結果、測線中で特に大きな違いは認められないことから単一速度(700m/sec)を採用しても問題無いことを確認した。

[4] 初動ミュート

強振幅の屈折波初動部分を抑制する目的で屈折初動部をミュートした。

[5] 最小位相変換

後述するデコンボリューション処理においては最小位相の前提が必要であることから、ゼロ位相であるバイブレーター震源のスウィープ波形を最小位相へと変換した。

[6] 振幅補償

地下における弾性波信号の幾何学的減衰、多層構造による透過損失及び非弾性効果による減衰等を補償することを目的として、ウィンドウ長600msecのAGC(Automatic Gain Control)を実施した。

[7] デコンボリューション

ノイズである多重反射波の除去と分解能の向上を目的として、波形圧縮操作であるホワイトニングデコンボリューションを行った。

[8] 共通反射点編集

弾性波信号の反射点位置は、測線の屈曲及び発震点のT−オフセットによって平面的に分布している。そのため、反射点の集中した部分を通る重合測線を設定し、10m毎にCDP番号を付し、重合測線に沿って各CDP位置から±5m区画内に存在する反射点のデータをCDPアンサンブルとして編集する操作を実施した。

[9] 浮動基準面に対する静補正

正しい地下構造断面を得るには、標高や表層の厚さの水平変化を補正する必要があり、これらの補正を静補正と呼ぶ。静補正量は、先の屈折波初動解析結果をもとにして計算した。基準面を、標高15.0mに設定し、大きい標高補正量の適用による重合効果への悪影響を取り除くために各CDPアンサンブルの平均標高(Floating Datum Plane)を求め、この平均標高と、基準面との標高差を補正した。

[10]速度解析(1回目)

定速度重合法(C.V.S.K. = Constant Velocity Stack Method)による速度解析を1km間隔で実施した。図3−2−10 に速度解析の一例を、図3−2−11 に重合速度プロファイルを示す。

[11]NMO補正

1回目の速度解析結果によって求められた重合速度により、各トレースデータを垂直往復走時に変換するNMO補正を行った。

[12]残差静補正(1回目)

NMO補正後のCDPアンサンブルを入力として、静補正で補正しきれないCDPトレース間の微少な時間ずれの量を統計的に求め、これを補正した。補正の最大シフト量は、4msecに設定した。

[13]速度解析(2回目)

1回目の残差静補正を適用した後、1回目の速度解析と同様に定速度重合法による速度解析を0.5km間隔で実施した。

[14]ミュート

NMO補正に伴う波形の伸長及び残留する屈折波初動部分を除去する目的でミュートを行った。

[15]残差静補正(2回目)

1回目の残差静補正及び2回目の速度解析の結果に基づくNMO補正を経た記録を入力し、1回目と同じく残差静補正量を統計的手法によって求めた。許容最大シフト量は、8msecとした。

[16]振幅調整

地下深部からの反射波の振幅を増幅し、深部に至るまでの平均化された振幅値を得るためにAGCによるスケーリングを行った。

[17]共通反射点重合

標準50重合で共通反射点重合を行った。

[18]周波数−空間領域予測フィルター

ランダムノイズを抑制し、相対的にS/Nを向上させるF−X予測フィルター処理を実施した。

[19]帯域通過フィルター

反射波の有効周波数帯域をテストによって確認し、不要なランダムノイズを除去する目的で以下のような帯域通過フィルターを適用した。

      往復走時        適用フィルターのパスバンド

0msec 〜 1000msec   20〜60Hz

1000msec 〜 1500msec   15〜60Hz

1500msec 〜 3000msec  10〜40Hz

3000msec 〜 5000msec  10〜30Hz

[20]基準面補正

平均標高から基準面(平均海水面 : M.S.L.)への補正を行った。

[21]時間マイグレーション

時間軸で表示されたスタック断面図上の反射点位置を実際の位置に移動させることを目的として、差分方程式時間マイグレーション処理を行った。マイグレーション速度は、重合速度の95〜90%を用いた。

[22]帯域通過フィルター

ランダムノイズを除去し、深部の反射波を明瞭にすることを目的として、重合後に適用したフィルターと同じパラメーターで帯域通過フィルターを適用した。

   往復走時          適用フィルターのパスバンド

  0msec 〜 1000msec  20〜60Hz

1000msec 〜 1500msec 15〜60Hz

1500msec 〜 3000msec 10〜40Hz

3000msec 〜 5000msec 10〜30Hz

[23]深度変換

時間マイグレーション断面に対し、測線上での重合速度を平滑化した単一速度を用いて、深度変換を実施した。サンプリングの間隔は、4mとした。

[24]最終断面図の表示

重合記録断面図(図3−2−12)、時間マイグレーション断面図(図3−2−13)、及び深度断面図(図3−2−14)を以下のスケールで表示した。

                水平スケール      時間/深度スケール   表示記録長

重合記録断面図      1:20,000         45mm/sec         4,800msec

時間マイグレーション   1:20,000         45mm/sec         4,800msec

深度断面図      1:20,000          1/25,000          5,000m