5 あとがき

関東平野は、新第三紀中新世に始まる造盆地運動により形成されてきた構造盆地で、その中心部では先第三系の基盤を覆って3000mを超す新第三系、第四系の堆積物が分布している。

本調査の結果、大宮地区では、提唱されている綾瀬川断層に関しては、後期更新世以降に変位を生じた証拠は認められなかったが、地下深部においては撓曲として基盤の変位を反映している可能性が明らかである。

関東平野では、下末吉海進に伴う堆積物である常総層の分布高度が周辺部で高く、大宮台地〜常総台地西部にかけての関東構造盆地中央で低下していることが知られており、関東平野全体として後期更新世以降にも沈降、隆起の構造運動が継続していることを物語っている(図5−1)。小玉他(1981)は、常総層の分布、台地面の解析等から、ブロック状の地塊運動を提唱し、基盤の変形が反映しているものと考え、ブロック境界部には断層、または断層性の撓曲が発達している可能性を述べている。

また、西埼玉地震・関東大震災等における被害分布等からブロック状の異常震動域の分布が報告されており(角田1980他)、これらも基盤構造の不連続的な特性を示すものと推定されている。

一方、厚い未固結の堆積物の分布は、基盤における変動を直接地表に反映するとは考えがたい。基盤における変位は軟質な堆積物に吸収されるようなかたちで、枝分かれしたいくつかの小断層や、緩やかな撓曲として、ある程度の時間をかけて変位していくのではないかと考える。

当地は、関東構造盆地の中央部から西南にかけての”斜面”に位置しており、基盤における綾瀬川基盤断層など、ブロック状の断層の存在も提唱されている。

また、北部の桶川市加納地区では、南部の大宮地区以上に深部へ向かって累積する反射面の傾斜が顕著である。当地域から、北西方、前橋市南部にかけては直線谷状の基盤のくぼみが知られており、断層推定位置は、谷の中央から西南の急斜面にかけての地域に相当する。この北西方には、深谷断層などの活断層の分布も知られており、これらのとの関係については、今後の課題である。

綾瀬川断層自体はC級またはそれ以下の活動度をもった断層であったとしても、関東平野基盤には、これ以外にも荒川伏在断層・綾瀬川断層を含む元荒川構造帯、ブロック状地塊の境界など隠された断層・断裂の存在も考えられており、今後広範囲における構造の把握が今後の地震予知、被害想定への課題の一つであろう。