(1)解析原理

VSP処理とは、PS検層デ−タを用いて反射波の発生深度を求めるまでの一連の処理を言う。反射波は速度境界面があれば必ずそこで発生し、記録上のアフタ−フェ−ズ中に現れる。しかし、通常反射波の振幅は非常に小さいものであり、オリジナル記録中で見つけるのは難しい。VSP処理は、そのような反射波をデ−タ処理によって抽出し、その発生深度を求めるものである。

図3−4−18にVSPの概念を簡単に示す。図中(B)は、(A)のような速度構造の地盤で得られる波路を表している。測定はPS検層と同じであり、地表の1点起振、ボ−リング孔中の1点受振である。点Qで受振した時、地表から直接下方に伝播してくる波Q1を1次の下方伝播波と言う。1層目と2層目の境界で1回反射してから上方に伝播してくる波Q2を1次の上方伝播波と言う。2回以上反射を繰り返す波Q3,Q4は、高次の下方または上方伝播波と言う。点Pで受振した時も同様に、P1が1次の下方伝播波、P2が1次の上方伝播波、P3,P4が高次の下方伝播波となる。これらの波を走時曲線上で見ると、図3−4−3−2(C)のようになる。PS検層のデ−タを用いて地盤の速度を求める際着目する初動位相は、1次の下方伝播波、即ちQ1やP1であり、それ以外はいわゆるアフタ−フェ−ズと称される部分である。

VSP処理で問題とするのは、アフタ−フェ−ズ中の1次の上方伝播波(以下、反射波と呼ぶ)、即ちQ2やP2である。反射波の発生深度は、1次の下方伝播波の位相と反射波の位相が交わる部分の深度、(C)で言えば、D1やD2である。通常のPS検層(ダウンホール法)では、1次の下方伝播波の走時曲線(Q1やP1)を解析していることになる。通常のPS検層の解析に加えてVSP処理を実施することにより、反射波の発生深度から速度境界面深度をある程度客観的に推定することができる。