(2)久米田池断層の変位量・平均変位速度についての考察

両ボーリング調査で確認された、Ma3〜Ma7の海成粘土層の上盤と下盤の標高と比高差を表2−5にまとめ、推定断面図を図2−15に示す。変位量を述べるにあたっては、地層の上面は浸食・削剥などの影響を受けている可能性が高く、海成粘土層の真の上面標高ではない恐れがあるため、下面標高の得られているものについてはこれを用いる。下面標高の比高は、Ma7層:176.75m、Ma6層:168.80m、Ma5層:189.22m、Ma4層:208.55mである。

これらの値と各海成粘土層の堆積年代(吉川,1998,図2−18)との相関図を作成した(図2−17)。図2−17より、Ma4〜6層の値は線形であることがわかる。この直線の傾きは比高/年代であり、この値は平均変位速度を示し、0.243m/千年である。この変位速度は「日本の活断層」(活断層研究会,1991)における活動度区分からはB級の活断層であることが示唆される。大阪市内の上町断層中心部における相関図(藤田ほか,1982を一部修正,図2−19)からは0.400m/千年という値が得られ、これと比較すると久米田池断層の平均変位量は小さいが、概ね中心部と同じ活動傾向を示す。

火山灰層については、八町池T火山灰(Ma5中)の比高188.73mという値が得られている。その他の火山灰については、下盤のアズキ火山灰は、狭山火山灰の約9.5m下位に位置すると仮定すると(大阪層群最下部団体研究グループ,1992)、その比高は212.3mという値が得られる。また、反射断面から推定される基盤の落差は約300mである。

また、Ma6とMa7の比高差がマイナスになる原因としては、No.1孔においてはMa5層〜Ma6層間の粗粒層がNo.2孔よりも厚く堆積した結果、No.1孔のMa6層の下面標高が高くなったと考えられる。

八町池T火山灰の降灰年代を70万年前と仮定すると、平均上下変位速度は0.270m/千年という値が得られる。また、アズキ火山灰の降灰年代を約85万年として平均上下変位速度を求めると、0.250m/千年が得られ、八町池T火山灰で求めた値を考慮しても、久米田池断層はB級の断層である。