(1)原理

地球には磁場が存在し、磁性物が南北方向に配列する性質は、方位磁石などに利用されていることからも、一般によく知られている。磁石のN極の示す方向が北(磁北)であることは、人類が文明を持って以来、不変的と考えられてきた。しかし、地質学的な長い時間で見ると、磁北は様々な規模・周期で変動し、時にはN極が南極側を指すこともあったのである。

地球上の堆積物中にはマグネタイト等の磁性鉱物が含まれており、ある一定の温度以下になると、その時の磁北を示したまま固化したり、鉱物の微粒子が堆積する際に当時の磁北に向いて定方向に配列したりすることが知られている。このようにして堆積物に記録された過去の地磁気は残留磁化と呼ばれ、地層の対比や編年のための重要な手がかりとなる。

そのような過去の地磁気を読み取り、既に明らかになっている地磁気の過去の特徴的な変動と照合して年代を測定する方法が、古地磁気層序法である。そして、時代の古さに応じた地磁気の変動を捉えることによって、地層の年代を推定することができる。それらの変動については、これまでに世界中の地層や海洋底のコアで調査がなされており、経年的変化と変化時の年代が明らかにされている。例えば73万年前に地磁気の逆転があったことがわかっている。したがって、それ以前の松山逆転磁極期(250万年前〜73万年前)では、持続時間が数万年程度の地磁気イベントを、それ以降のブリュンヌ正磁極期(73万年前〜現在)では持続時間が数百〜数千年の地磁気エクスカーションを見つければ年代を推定することができる。弥生時代中期以降の過去2000年については地磁気永年変化の様子がわかっているので、それと照合することができる。いずれにしても、堆積層の残留磁化方向を知るのであるから、試料は方位のわかった定方位の試料でなければならない。

大阪層群はこれまでの研究に基づけば、ガウス正磁極帯〜松山逆磁極帯〜ブリュンヌ正磁極帯下半部の地層群であり、その中にはオルドバイ正磁極亜帯・ハラミロ正磁極亜帯の2亜帯が認められる。その他に、松山・ブリュンヌ境界の下位の上桂(山田V)火山灰層準に小さな正磁極帯があり、ブリュンヌ正磁極帯中のカスリ火山灰層準にも逆帯磁が認められている(図2−8)。