1−6 今後の課題

上町断層帯の活動量についての見積もり、あるいは傾向については少しずつ明らかになりつつある。しかし、これはあくまで断層の過去の歴史を未来に生かすための基礎データにすぎない。上町断層帯は都市直下を通過する断層であり、その上には非常に多くの人間が生活を営んでいることに留意し、常に上町断層帯近傍の土地活用情報には注意を払う必要がある。現時点では、上町断層帯のような活断層の1回の変位量や活動周期、最新の活動時期を知る手がかり、あるいは手法は確立していないが、今回の取りまとめから考えられる上町断層帯における調査の今後の可能性について以下にまとめる。

・ 基盤を含む反射法地震探査を実施し、基盤変位量を明らかにする。

・ 反射法地震探査測線上にて長尺ボーリングを行い、各地層層序を確定し、反射断面との対比を行う。

・ これらを用いて各地点における断層の変位量および活動の変遷を明らかにする。

・低位段丘層等の分布する部分で断層を挟んでボーリング調査を行い、対比を行う。

特に、淀川周辺の上町断層主部の活動性については、基盤落差がもっとも大きいことから、この部分がもっとも変位の大きな部分と考えられるので、堆積状況および撓曲状況を詳細に調査・把握した後に適切なボーリング調査を実施すれば、上・下盤の詳細な対比から、より詳細な活動の変遷を解明することが可能ではないかと考えられる。また、大和川付近の断層下盤部にてボーリング調査を行い、上盤に見られる平安神宮火山灰などを用いた対比により第四紀以降の堆積層中の変位量を正確に求めることが最近の活動を解明する上で重要と考えられる。