1−5−4 総括

今回の坂本断層および久米田池断層の調査結果を総合して考えると、坂本断層は地表面付近では比較的緩やかで広範囲な撓曲構造となっており、地層の食い違いなどが地表面にまで存在している可能性は非常に低い。また、久米田池断層についても断層や撓曲の構造が示唆される部分は存在するが、断定するには至らない。久米田池断層の北部反射法地震探査(H8年度)の結果からは、基盤のずれや地層の撓曲が見られたが、中部域の群列ボーリングの結果からは、その撓曲構造は地表近くにおいては非常に緩やかであると考えられる。また、南部のトレンチおよび先行ボーリングの結果からは、地表面にはほとんど断層構造が見出せなかった。よって、久米田池断層は南部域では活動量が非常に小さいものと考えられる。この結果から考えると、空中写真判読で低断層崖と判読されたリニアメントは,撓曲構造が関与した可能性はゼロではないが、それに加えて浸食と人工改変が加わったものと考えられる。

中部域で行なった群列ボーリング調査からは、大阪層群V層基底部の対比より、約10m程度の変位が確認されるが、これを断層運動に一義的に結びつけることは難しい。しかしながら文献等をもちいて検討すると断層の可能性もある。

解釈として、ここでの構造変化があったとすると、再来期間の長いものであるか活動度の低いものの、あるいは最近の活動のないものが想定される。しかしいずれも現時点では地質学的証拠に欠ける。

2年間にわたって行なってきた調査の結果、北部仏念寺山断層から、坂本断層・久米田池断層にいたるまで、基盤岩に変位をもたらし、堆積層が撓曲する現象が連続している可能性は高い。その南端は、坂本断層から久米田池断層近傍で数本の断層に分岐しながら変位量を小さくして、尾生町付近でなくなるものと考えられる。上町断層系の南限はこの地域と考えられ、大阪府北部の仏念寺山断層から連続しているとしても、総延長は約40kmになる。

これまでに取り行なった調査結果は断層調査のみならず、大阪府の地盤特性を解明する点においても有益なものであり、今後の防災対策に活用したい。