5−3−2 トレンチ調査の方法

(1)トレンチの掘削

トレンチの掘削は次の手順で行った。

(a)バックホーを用い、東側(上盤側)から表層(耕作土)をはぎ取り、下の土砂と混ざらないように区別した。また、西側(下盤側)でも表土をはぎ取り、下の土砂と混ざらないように区別した。

表土をはぎ取った後、東側の上盤側から本掘削を始めた。約2.5mの深さまで掘削した段階で、下部の礫層から大量に出水が起こった。この水を抜き取るために、100Vポンプを2台使ったが、出水量の方がポンプの能力を上回り、水を抜き取ることができなかった。そのため、緊急に200V発電器と200V・3インチポンプを取り寄せ、ようやく水たまりを解消させた。その後も流水量は減ったが出水は続き、埋め戻し時まで続いた。

土嚢等で水止めを行い、西側の掘削を続けた。このとき斜面の崩壊を防ぐために法面にはある程度の角度を付けた。掘削下面は大阪層群であり、法面で大阪層群の構造が確認できる程度(50cm)ほど大阪層群の粘土を掘り込んだ。

大阪層群の上面で変位が見られないため、予定掘削長(長さ10m)を越えて掘り進んだ。

下盤側の敷地の端まで掘り込み、結局大阪層群上部の急な変位は確認されなかった。敷地の端に農業用水路および敷地境界線があるため、法面崩壊を防ぐために、トレンチ西端については、すぐに埋め戻しを行い、緩やかな法面を付けた。

掘削したトレンチ法面は地層の詳細な観察ができるように人力で余分な土砂を除去し平滑に整形した。

第2トレンチについては、第1トレンチ法面整形後、第1トレンチ西側の地層の確認のため敷地最西端から東側に深さ2m程度のトレンチを長さ10mほど掘削したが、第1トレンチのような礫層の削り込みなどが確認されなかったため、部分的に整形し観察を行い、スケッチは行わなかった。

(b)整形したトレンチ法面には観察およびスケッチの座標として1mメッシュのグリッドを以下の手順で設けた。

1)トレンチ法面の上端に杭と板で柵を作る。

2)板の水平距離1m毎に釘を打ち、基準点としてのS1などのラベルを釘の下に貼り付けた。

3)トレンチ法面上にレベルを用いて基準となる水平線を求め、水糸を張る。

4)法面上部の1m毎の釘から水平線と直交する水糸を下ろし、これと法面基部との交点に釘を打ち両者を結ぶ。

5)水平線を基準として、各水糸に法面長1m毎に目印を取り付け、水糸で結び1mメッシュのグリッドを作成する。

(2)観察およびスケッチ

トレンチ法面の観察およびスケッチを行った。スケッチの縮尺は20分の1で行った。

観察は肉眼で識別でき、かつ所定の縮尺でスケッチに表現できる精度の単層毎に地層を区分し、単層毎の層相・変形構造・堆積構造・地層境界の形状、層位関係、断層・亀裂、動植物遺体、液状化跡等について詳細に行った。

(3)試料採取

以下の各種試料を採取した。採取した試料は採取位置・試料番号等を明記したビニール袋に収納し、スケッチに試料採取位置と試料番号を記入した。

1)炭素年代測定用試料          16個

2)花粉およびプラントオパール分析用試料 15個   

(4)トレンチ平面図の作成

平板測量によりトレンチ周辺の平面図(図5−2)を作成した。作成の範囲はトレンチの位置を特定できるように道路や擁壁などの構造物を含む範囲とした。縮尺は200分の1、高さの精度は誤差5cm程度とした。

(5)トレンチの埋め戻し

トレンチの埋め戻しは、十分に転圧しながら行った。さらにトレンチ掘削前にあった段差を復旧し、表土を均等に戻した。

復旧終了後、直ちに仮設物、工事機械等を撤去した。

埋め戻し時、上盤側地権者の要望により、法面上部に井戸を設置した。

(6)現場管理

調査用地の保全および安全管理のため、トレンチ周辺にフェンスを張り、関係者以外のものが立ち入らないようにした。降雨等により法面が崩壊するおそれがあるため法面はシートで覆った。