5−3−3 豊成地区の想定地質

豊成地区の地質構成はボーリング結果から次表のようにまとめられた。なお、ボーリング結果から想定された地質区分とトレンチ調査で確認された地質区分との対応も同表に示している。以下に、これらの地層の土相・成層構造について述べる。さらに、活断層の想定位置についても言及する。

表5−3 ボーリング結果による豊成地区の地質構成表

イ. 土相・岩相

  ・cs 層

本層は現在の田を構成している耕作土である。層厚は0.3m程度である。

  ・Bk 層

本層は細粒土から構成されている。具体的にはシルト質粗〜細砂や砂質シルトから成るが、本層は横方向の土質変化の激しい地層である。細礫がかなり混入しているとともに、有機物も相当数混入している。層厚は0.7m程度である。

  ・S1 層

本層は北端で実施されたT−4孔のみで確認された地層で、淘汰の悪いシルト質砂から構成されている。一部に径5mm程度以下の細礫が混入している。本層は細粒分に局部的に富み、粘性土状を呈するところもある。また、本層は含水比が高く、かなり軟質である。さらに、本層は有機物(径3mm程度以下)を全体に含んでいる。層厚は0.7m程度である。

  ・GU 層

本層はマトリックス支持型の礫層を主体として構成されている。本層は胡桃大程度以下の礫を含む。混入している礫は、緑色岩・チャート・泥質岩・安山岩、等の様々な岩種を起源としている。礫の円摩度は亜角〜角を主体とする。基質はシルト混じり〜シルト質砂である。層厚は1.5〜2.5m程度で、南側に向かって、やや厚くなる。

  ・GL 層

本層は礫支持型の礫層を主体として構成されている。本層は高い礫率を示し、径5〜40mm程度の亜角〜亜円礫を含む。さらに、径100mm程度以上の玉石が混入しているところがある。礫種は緑色岩・チャート・泥質岩・安山岩、等である。基質は細〜粗砂で、細粒分はほとんど混入しない。層厚は1〜1.5m程度である。

なお、本層は最上部に砂・シルトの薄層を伴う。

  ・基盤岩

基盤岩は三郡変成岩類の泥質片岩と舞鶴層群の緑色岩から構成されている。両者の境はボーリングT−3・4孔の間にある。

基盤岩の岩質について、三郡変成岩類と舞鶴層群との境界部付近にあたる部分とそれから離れた部分とでは破砕の程度が異なる。同境界近傍でおこなわれたボーリング(T−2・3・4孔)のコアは破砕が進み、主として鱗片状コアとして採取されている。これに対して、同境界から離れたところでおこなわれたボーリング(T−1孔)のコアはせん断性の割れ目に富むものの、硬質な短柱〜岩片状コアとして採取されている。つまり、同境界付近に破砕の進んだ部分が分布する傾向が認められる。こらは電気探査結果と一致している(図5−2−3)。

さらに、電気探査結果ではボーリングT−3孔とT−4孔との間に低比抵抗帯が高角度に分布している。この位置は前述した三郡変成岩類と舞鶴層群との境界部付近にあたる。つまり、地質断層の位置が電気探査で押さえられたものと解釈できる。

ロ. 成層構造

豊成地区の地質断面図を図5−3−1に示す。同図によれば、基盤岩上面のかたち・未固結堆積層の成層状態は次のように想定される。

 ・基盤岩上面のかたち

基盤岩上面は北側(T−4孔側)に向かって僅かに上昇している。しかし、その勾配は2〜3°程度と微少なものである。

 ・未固結堆積層の成層状況

豊成地区において、各堆積層はほぼ水平に分布している。しかし、次の2箇所において、特異点が認められる。

◇T−2孔とT−3孔との間

GL層上面の分布高度はここを境として異なり、南側が1m程度低くなっている。

◇T−3孔とT−4孔との間

北端部には湖沼成の堆積層と考えられるS1層が局部的に分布している。ここにはかって、凹地が形成された可能性が考えられる。また、電気探査結果をみると、S1層を示唆するものと考えられる低比抵抗帯がボーリングT−3孔とT−4孔との間で高角度に垂れ下がっている。S1層が変形している可能性が示されている。

 c. 活断層の想定位置

 前述した調査結果からみて、活断層の所在地として次の2箇所が候補にあげられた。しかし、下記のような疑問点もあった。したがって、地盤状況をトレンチ調査で確認する必要があった。

 ・T−2孔とT−3孔との間

ここではGL層上面の分布高度に差が認められている。この高度差を活断層と結びつけて考えることもできる。しかし、疑問点として、基盤岩上面のかたちに顕著な不陸がないことがあげられる。

 ・T−3孔とT−4孔との間

ここで注目されるのはS1層の存在である。同層はその土質から湖沼成の堆積層と考えられ、細粒土の堆積する凹地の存在を示唆している。そして、その分布位置が基盤岩の地体構造区分を分ける地質断層の近傍にあることは注目に値する。つまり、作業仮説として、地質断層面あるいはその周辺を使って動いた活断層によって凹地が生じ、そこに細粒土が堆積したものと考えることもできる。さらに、電気探査結果における低比抵抗帯の高角度分布も注目される。

しかし、疑問点として、基盤岩上面のかたちに顕著な不陸がないことや、GU・GL層境界面の分布形状にほとんど変位・変形がないようにみられること、があげられる。

図5−3−1 豊成地区の地質断面図

図5−3−2 豊成地区における電気探査結果とボーリング結果との対応