2−4−3 扇山断層

扇山集落西方に断層崖が連続する。断層の長さは、約1kmである。1章で述べたように、大分県中部地震震源域にあたる(図4−18)。平成14年度の調査では、扇山断層の東方延長部の、大分県中部地震当時の構造物の変形(村井・松田,1975)が現在も確認できる地点で露頭剥ぎ調査を行なった。その結果、水田床土とみられる赤色土層(K−Ah火山灰<7,300y.B.P.>から成る)の上面に、1〜2cm程度の上下方向の変位を伴っているクラック群が見出された(図4−19)。これらのクラックは、地表の構造物に生じた変状の延びの方向(おおむねN60W)に生じたの左横ずれのせん断によって形成されたと考えられるものであり、想定される地盤の動きは、大分県中部地震の発震機構と一致する(1章参照)。

このことから、扇山断層が大分県中部地震で活動した可能性が想定されたので、その確認と大分県中部地震に先行する断層活動を把握するために、扇山集落西方の牧草地内でトレンチ調査を実施した。しかしながら、AT火山灰以後の地層には、明瞭な変位は確認できなかった(図4−20)。

以上のことから、大分県中部地震のような、比較的規模の小さい地震(マグニチュード6.4)では、その記録を地質学的に追跡することは困難であると判断される。

図4−18 扇山断層と大分県中部地震の震央

図4−19大分県中部地震で生じたと推定される地山のクラック(扇山断層の延長部)

図4−20 扇山断層のトレンチ掘削面