2−3−2 鹿伏断層と滝上南断層

両断層とも西方の野上川左岸に分布する火砕流堆積物の堆積面と考えられる新しい地形面(Aso−4火砕流堆積物の堆積面か?)上に、南落ちの低断層崖が認められる(図3−13参照)。低断層崖の比高は、10m以下である。この平坦面の西方でも南落ちの変位地形とみられるものは認められるが、あまり明瞭ではなく、連続性もよくない。鹿伏断層については、鹿伏岳の北まで連続すると判断した。平坦面の東方では、野上川右岸の尾根の平坦面上に同様の変位地形がみられるが、これもあまり明瞭ではない。このような認定のもとに長さを評価すると、鹿伏断層が約4km、滝上南断層が約2.8kmとなる。

これらの断層の新しい時代の断層活動について検討するために、平成14年度に両断層崖で露頭剥ぎを実施した。両地点とも、リニアメント位置を横断して、K−Ah火山灰層を挟む黒ボク土層とその下位のローム層(最上部にAT火山灰ガラス濃集)まで掘削した。いずれの地点でも、リニアメント付近において、通常の斜面変動で生じたとは考えにくい地層の変形構造が見出されたが、AT火山灰以後の地層に明瞭な上下方向変位を与えている断層は確認できなかった(図3−14、図3−15)。

この結果については、次のような解釈が考えられる。

@鹿伏断層と滝上南断層では、活動間隔が数万年(3万年以上)と長く、このため、AT火山灰以後には、断層活動は生じていない。ただし、今後活動する可能性は否定できない。

Aこれらの「断層」は、すでに活動を終了している(したがって、活断層として取り扱う必要はない)。

BAT火山灰以後にも断層活動が生じたが、横ずれ変位主体ないし撓曲変形であり、上下方向に明瞭な変位を与えるような活動ではなかったため、昨年度の調査では確認できなかった。

後述する須久保撓曲などの調査結果からみると、Bの可能性は否定できないが、積極的に支持するデータは得られていない。したがって、現時点では、可能性の指摘だけに留めておく。@、Aのいずれの解釈でも、この2つの断層は、水分断層に比べて活動性が低いことになる。観察された現象に即して表現すれば、これらの断層では、AT火山灰層準以後には、地層に明瞭な変位を与える断層活動は生じていないと判断される。