(1)変位基準面の検討

このことが、新しい時代の断層活動がないことを示すのか、新しい活動が隠されているだけなのかを具体的に検討するために、万年山地域中央部で地形面とその構成層を詳細に調査した。その結果、この地域には、次のような性格を有する由来が確定できない火砕流堆積物(以下、”不明火砕流”堆積物と称する)が広く分布していることが明らかとなった(図4−2−29−1図4−2−29−2)。

<”不明火砕流”堆積物の性状>

・ この堆積物は、五馬市デイサイトから成る溶岩台地を開析した東西方向の古い谷を埋めて、その後に開析され谷中に段丘上の尾根を作っている。また、同様に溶岩上面を埋めて堆積しているが、谷中の段丘状の地形面より一段高い尾根を構成していると考えられる堆積物もある(図4−2−30)。

・ 露頭観察では、いずれも五馬市デイサイト溶岩や万年山流紋岩溶岩の上位であり、一部は亀石山デイサイト溶岩も覆う。Aso−4の下位であり、少なくとも一部は、Aso−3より上位である。赤色土化しており、温暖期を経験したことを示唆する(図4−2−31)。

・ 含まれる鉱物の組成や火山ガラスの屈折率からみて、時代の異なる複数のフローからなると考えられる(図4−2−31図4−2−32−1図4−2−32−2図4−2−32−3)。岩石学的には、この付近で知られているどの火砕流堆積物にも該当しない(表4−2−1図4−2−33−1図4−2−33−2)。

・ フィッション・トラック法による年代は、34万〜64万年前で、かなり幅があり、この点からも複数の時代の堆積物が存在すると考えられる(図4−2−34)。

・ 堆積面・層序・年代等のデータを総合すると、Aso−4とAso−3の間の時代、それより古く亀石山溶岩や万年山溶岩より新しい時代(30万年前頃と60万年前頃?)の2ないし3層に区分できるようである(図4−2−35)。