4−1−3 調査地域の地質分布

調査地域の地質分布や地質構造については、旧地質調査所(現:産業技術総合研究所)による図幅調査の成果(久住、別府、宮原の各地域)、新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下、略称のNEDOを用いる)による地熱開発に関連した研究成果などの文献にまとめられている(図4−1−10など)。今回の調査では、これらの成果を参照し、地表踏査の結果を加えて調査地域の地質図を作成した(付図4)。

調査地域には、第四紀更新世以後(特に更新世中期以後)の新しい火山岩類が広く分布し、いくつかの火山では火山山体の形状が残っている。また、火山岩類の年代値も数多く得られている。山体の形状が認定できる主な火山とそのおおよその年代は、調査地域の東部から南部では、野稲岳・鹿伏岳(31万年〜41万年前)、崩平山(34万年〜36万年前)、桶蓋山(40万年〜50万年前)である。これらは、いずれも安山岩質の溶岩から成る複数の溶岩円頂丘と周辺に分布する火砕岩で構成されている。一方西部の万年山地域に分布する火山岩類は、流紋岩ないしデイサイト質の溶岩を主体とし、上面が平坦な台地状の山体を形成している。文献に示された年代は、万年山地域の溶岩がおよそ53万年(47万年〜70万年)前、五馬市地域の溶岩がおよそ86万年前、亀石山地域の溶岩がおよそ42万年前である。これらの層序・年代値をもとに、調査地域の火山層序、火山活動史をまとめた(表4−1−1表4−1−2)。断層評価にあたっては、これらの火山噴出物を変位基準として中期〜後期更新世以後の変位量及び平均変位速度を求めた。

大局的にみると、調査地及び周辺の火山活動は、約500万年前に始まり、徐々に活動範囲を西から東へ狭めてきており、70万年前を境に輝石安山岩質の活動が、角閃石安山岩質の活動に変化しているとされている(鎌田・小玉,1993;図4−1−11参照)。今回の調査地域内に分布する火山岩類の年代は、最も古いもので約100万年前(耶馬溪火砕流堆積物)であり、最も新しいものは後期更新世のものであるが、おおまかにみると調査範囲東部の崩平山地域に分布する火山岩類の年代は、西部の万年山地域に分布するものに比べて相対的に新しい時代のものが多いようである。