(1)地震の規模と震源

図4−1−5参照)

大分県中部地震は、1975年4月21日午前2時35分に発生したマグニチュード6.4の規模の地震である。この地震に先立ち、1月23日には、調査地南西方の阿蘇カルデラ北部を震央とするマグニチュード6.1の地震が発生している。

地震発生当初に気象庁によって発表された震源の位置は、庄内町の花牟礼山付近とされ(気象庁,1975)、宇佐美(1996)や活断層研究会(1980,1991)も、そのデータを用いている。しかしながら、山科・村井(1975)は、妥当と思われる地下のP波速度分布を想定した上で、震源の再決定を行い、湯布院町湯平温泉の南方、扇山集落のあたりの深さ15km付近を震源とした。久保寺・三浪(1975)も同様の結果を得ている。

後述するように、地震時の被害分布は、この付近を中心として西北西−東南東方向に帯状に延びている。また、村井・松田(1975)は、扇山集落付近で構造物に左横ずれの変形が生じたことを報告しており、これが、この地震における地殻構造運動に起因する可能性のあるほとんど唯一の確実な地盤変形の報告である。このような点からみると、震源位置としては、後者の報告を採用する方がよいと考えられる。