(2)断層の位置

前出の図2−5−1−3には、沖積層の構造(K−Ah火山灰層下限の等標高線)に加えて、断層位置に関する次のデータを示している。

@ 反射法探査の結果(今年度実施分:大野川・乙津川・日岡測線、平成12年度実施分:芸術会館測線)

A 既往文献資料(田中、未公表;1/5万「大分」図幅;都市圏活断層図「大分」)

これらを総合して、大分市内東部地域の伏在断層の位置を推定した。

・ 完新世に活動した活断層が複数存在する。

・ 走向は概ね東北東−西南西。

・ 北側の断層は、旧海岸線付近を通っている(図2−5−3−1)。

・ 大野川測線で確認された南側の断層の西方延長部は、乙津川測線でも確認できる。

この断層の南側では、完新統が直接大分層群相当層を覆っているが、北側では、完新統の下位に晩氷期〜最終間氷期の堆積物が厚く分布する。

・ 南側の断層の西方延長部にあたる日岡地区で確認された断層では、断層の南側でも最終間氷期の堆積物厚く分布しており、大野川測線の南側の断層とは異なっている。

・ 一方、平成12年度の調査結果から判断すると、日岡地区の断層は、芸術会館地区で確認された断層と、少なくとも周辺の地質分布に関しては、類似した性格を有しており、両地区の間では、断層の存在を直接示すデータは得られていないが、ほぼ連続しているとみてさしつかえない。

・ 平成12年度報告では、芸術会館地区の断層は、府内地区の断層に連続すると推定したが、府内地区の断層では、断層の両側で完新統が直接大分層群相当層を覆っており、断層付近の地質分布からみると、他の地区の断層とは異なっている。 

・ 以上のような問題はあるものの、図に示したように、調査地域に伏在する断層は、分布位置からみて、おおむね北と南の2つの断層系に区分できるようである。これをふまえ、委員会の承認のもと、断層が確認された地域名をとって、北側の断層系を「三佐断層」、南側の断層系を「志村断層」(西方部は、「府内断層」)と呼称することとした。

〇大在沖断層群との関係

三佐断層の東方海域には、活動性の比較的高い「大在沖断層群」が存在する。両断層(群)を比較すると、次のようになる。

                三佐断層      大在沖断層群

変位の向き         北落ち       主に南落ち

K−Ah火山灰層の上下方向変位量   約30m       最大3m   

  

両断層の間の海域では島崎・岡村両委員による研究で音波探査による断層追跡が行なわれているが、現在のところ断層は確認されていない。

大在沖断層群と陸の断層の関係としては、次のようないくつかの考え方がある。

a.陸の断層の東端がほうき状に分岐したものとみる。

b.陸上断層の未確認の東方延長部が、大在沖断層群の南側に存在していると推定し、大在沖断層は、この断層を主断層とし、上盤側に形成されたアンチセティックな断層であるとみる。

c.大在沖断層群は、陸上断層と関連するものではなく、海域の主断層である別府湾中央断層と関連して形成されたものと考える。

現時点では、この点について確実に評価することは難しいが、bないしcの考え方が、より考えやすいと思われる。