(3)堆積速度の変化

図2−5−2−5にNo.5孔で得られた14C年代測定値(conventional age)※を古水深計算値の変化と合わせて示す。

図に示したように、明らかに再堆積によるとみられる古い年代値を除き、海成試料と陸成試料の値の深度方向分布は、おおむね整合的である。また、K−Ah火山灰や粗粒軽石

の噴出年代(後者については、既往の海域調査報告書を参照)とも整合しており、信頼性は高いと考えられる。

この深度−年代値曲線の勾配(堆積速度に対応する)をみると、堆積速度が小さいく間と堆積速度がきわめて大きい区間が交互に出現している。また、堆積速度が小さい区間は、前述した、層相や化石からみた環境変化の急変深度と対応している(層準V−2を除く)。

表2−5−2−3

すなわち、これらの深度を挟む区間では、堆積場が浅くなるに伴って堆積速度が小さくなり、その後の堆積場の深化によって堆積速度が急激に大きくなったと推定される。ここで、堆積速度が大きいと推定される区間では、深度−年代値曲線の勾配は、ほとんど垂直であり、深度に対する14C年代値の逆転も生じている。このことからみて、堆積場の深化によって生じた空間は、きわめて急激に埋積されたと考えられる。また、古い年代値を示す試料の再堆積が生じている深度は、堆積速度が小さくなる区間に対応しており、この区間では、堆積場が波浪等の影響を受ける深度まで浅くなり、浸食、再堆積現象が卓越するようになったことを示していると考えられる。

※ここで用いた試料には、陸成試料(有機質粘土など、δ13C≒20〜25)と海成試料(貝やウニなど、δ13C≒0)の2種類がある。両者の値を統一的に評価し、かつ海域のデータと比較するために、以下では、一般に海成試料と陸成試料での14C年代値の差として認められてい値(約400年)を陸成試料の値に加えて表現する。