(2)ピストンコアリングによる調査結果のまとめ

(イ)資料の基本データ収集結果

試料の詰まったコアパイプは電動鋸により1m毎に切断し、油圧押し出し器により内部の資料を押し出す。この時、試料はステンレスワイヤーにより縦に二分割し、一方を分析用に使用、他方は再現性の確認の為保存するものとする。

切断面を霧吹きで洗浄した後、目視による堆積物の観察を行った。明瞭な堆積層としては、アカホヤ火山灰と浮石層の2層が認められた。アカホヤ火山灰層は淡橙色のよく締まった細粒砂状を呈しており、目視でみる厚さは5cm程度であった。相対的隆起側のBEP99−6では深度780cm付近、相対的沈降側のBEP99−3では1020cm付近にみられる。浮き石層はφ5mm〜1cm程度の浮石からなっており、BEP99−3では880m付近にみられる。BEP99−6では再堆積と思われる浮石はあるが層準としては確認できない。

写真3−1写真3−2写真3−3写真3−4写真3−5にBEP99−1,3,4,5,6のコア写真(半裁後)を示す。

(ロ)試料の分析

各コア試料は、アルミパイプから押し出した後、帯磁率測定、粒度分析、含水比測定及び鏡下観察による地質記載を行った。図3−11−1図3−11−2図3−11−3図3−11−4に各コア試料の分析結果を示す。

(a)帯磁率測定

帯磁率測定は、試料ををアルミパイプから取り出した直後、帯磁率計(Bartington Instruments社製)を用いて2cmずつ実施した。

帯磁率の分布は、各コアとも良く似た特徴がみられた。海底から370−400cmまでの範囲は連続して帯磁率が高く120μSI程度の値が得られており、また400cmからアカホヤ層付近までは逆に25μSI程度の値のゾーンが存在している。アカホヤの下位の層まで貫入したBEP99−6では900cm以深から130μSI弱程度の高い帯磁率を示すゾーンがみられる。堆積物の変化に伴って認められるピークは、下側のウェッジ堆積物の部分、浮石層の部分、アカホヤ層の部分で特に顕著であった。

(b)粒度分析(粗粒成分量)

粒度の組成を調査する目的で、試料を粒径125μm以上と63−125μmに篩い分けて、各々の分量を測定した。これら粗粒成分の分量のピークが顕著に表れる個所として、2個所のウェッジ堆積物の部分、浮石層の部分、アカホヤ層の部分が上げられる。

(c)含水比測定

含水比分布は概ね35〜55%の範囲で、海底面から地下深部に向かって値が低減していく傾向が共通してみられる。定常値に対して顕著に含水比の低くなるピークは2個所のウェッジ堆積物の部分、浮石層の部分、アカホヤ層の部分が上げられる。

図3−11−1 BEP99−1堆積物分析結果図

図3−11−2 BEP99−3堆積物試料分析結果

図3−11−3 BEP99−4堆積物試料分析結果

図3−11−4 BEP99−6堆積物試料分析結果

(d)鏡下観察による地質記載

堆積物を鏡下で観察した結果、コアの対比をする際の鍵層となる火山性堆積物層を6層認めた。各層の概要を以下に示す。

@スコリア層 

スコリア質の火山灰層。BEP99−3では520cm付近に出現。

写真3−6 BEP99−1 525〜530cmのφ>125μm試料。右下白バーは1mmスケール。

Aスコリア層直下の火山灰層1 

強発泡の茶色ガラス。BEP99−3では540cm付近に出現。

写真3−7 BEP99−1 540−545cmの63−125μm試料。茶色の発泡性ガラスを含む。

B火山灰層2 

強発泡の茶色ガラスで、下位の層準に比べて粗粒なものは少ないが量が多いことで区別できる。BEP99−3では760cm付近に出現。

写真3−8 BEP99−1 735−740cmの>125μm試料。茶色の発泡性ガラスを含む。

C火山灰層3 

強発泡の茶色ガラスで、上位の層準に比べて粗粒なものが多い。BEP99−3では815cm付近に出現する。

写真3−9 BEP99−1 780−785cmの63−125μm試料。茶色の発泡性ガラスを含む。

D浮石層 

浮石の層。BEP99−3では880cm付近に出現。BEP99−1ではやや薄く、BEP99−3、4では厚くみられるのに対し、BEP99−6では再堆積と思われる浮石はあるが層準としては確認できない。この層準もこれまで湾東部のコアで確認されており、約5300yBPとの結果が得られている。

Eアカホヤ火山灰層

上部は透明ガラスだが、最下位に粗粒の浮石質の火山灰と茶色のガラス片を含む。目視では5cm程度の厚さしかない。BEP99−3では1020cm付近に出現する。BEP99−6ではこの層の直下に火山灰層がみられるが、いまのところこの関係は不明である。

写真3−10 BEP99−1 940−945cmの>125μm試料。アカホヤ火山灰。

@Aの2層はこれまでのコア試料からもペアになって別府湾の広域で確認できており、年代は約2000yBPという結果がえられている。また、BCの2枚の火山灰層は、文献の記載によると下位のガラスで4000yBP程度とされている。

(ハ)炭素14年代測定

各コア試料からサンプル20試料(主にウニ、貝殻)を採取、炭素14法により年代測定を実施した。表3−1に測定結果の一覧表を示す。

表3−1 炭素14年代測定結果一覧表