(3)花粉分析結果

今回の調査ではbS孔とbP孔の2孔で、沖積層を抜いて基盤まで掘進した。確認された基盤は、いずれも凝灰質の礫岩、砂岩ないしシルト岩である。

大分市内の基盤としては、周辺の地質分布から鮮新統〜下部更新統の碩南層群、もしくはその上位の下部〜中部更新統の大分層群が期待されるが(吉岡ほか,1997、図3−5−1 参照)、両孔での基盤はコアの固結度にやや違いがあるものの、層相のみからは、いずれに対比されるかの決定が困難であった。そこで、含まれる花粉による対比を試みた。結果は次の通りである。

分析試料         分 析 結 果

bS孔  46.1m  メタセコイア属の花粉を含む。大西(1965)、野井(1985)の花粉分帯に照らすと、碩南層群湖田層ないし大分層群最下部の五島層に対比される。

bP孔  63.1m  メタセコイアをはじめとするスギ科の花粉を全く含まない。大西(196 )に照らすと、トウヒ属を多産する点では大分層群の篠崎層に類似する。野井(198 )の分帯に照らすと、大分層群瀬尾層に対比される。いずれにせよbS孔の基盤より若い大分層群の一部に対比される。

すなわち、沖積層の地質分布からみた断層の上り側に、より古い地層(碩南層群)、落ち側に、より新しい地層(大分層群)が分布することになる。このように基盤を構成する地層の層準が異なることからみると、両孔の間には断層が存在するとみてさしつかえないと考えられる。かつ、北側(bP孔)が相対的に落ちているという断層の性格も少なくとも更新世まではさかのぼると判断される。