(1)火山灰分析結果

ボーリングコア観察で確認された火山灰とその分析結果は、次の通りである。

・基盤直上の泥炭層中の火山灰層

bP孔の深度57m付近(試料番号t.FN1−1)と、bS孔の深度42m付近(試料番号t.FN4−2)にみられる。火山ガラスの屈折率の最頻値は、1.498〜1.499付近にあり、このガラスはAT火山灰(22,000〜25,000年BP)起源とみられる。しかしながら、屈折率のやや高い(1.500〜1.514)ガラスも混入しており、AT火山灰純層ではなく、複数の火山灰の混合層と判断される。後述するように、分析試料直上の泥炭層の14C年代は、11,000〜12,000年BPであることも、この判断を支持する。

・中部泥層中の火山灰層

すべての孔の中部泥層中に“白色シラス”状の火山灰が挟まれている。小断層や上位層の削り込みがない場合の層厚は p〜 pと比較的厚く、軽石粒の上方細粒化が明瞭に認められる。

代表として、bV孔の深度30〜31m付近の層について分析したところ、上部の細粒部での火山ガラスの屈折率は、1.511〜1.512にピークがあり、K−Ah火山灰(6,300年BP)の純層と判断された。下部の平行葉理が発達する部分も、含まれる火山ガラスは、K−Ah火山灰と判断されたが、やや屈折率の異なる火山ガラス(1〜2種)の混合がみられた。

・K−Ah火山灰より上位の火山灰層

K−Ah火山灰層より上位にも、層厚は薄いが(最大2p程度)、複数の火山灰層が確認された。bS孔の深度10.1mと13.1m、bU孔の16.3m、28.0m、bV孔の9.3m、11.6m、22.9mの試料について分析したところ、火山ガラスの屈折率は、1.497〜1.499付近と、1.510〜1.514付近のバイモーダルの分布を示した。ガラスの形態等からみて、Yf火山灰、K−Ah火山灰、AT火山灰等の混入層と判断される。

平成10年度報告書に述べたように、由布岳由来とみられる火山灰は、K−Ah火山灰以後、複数回噴出している。今回のデータのみでは、コアにみられる火山灰の対比、時代決定は困難と判断した。