(1)飛岳1断層

飛岳火山’(38万年BP)の山体上に南落ちで、比高20m程度の断層崖がみられる。断層露頭では、立石山火山由来の石質火砕流堆積物とローム質層が高角の断層で接している。約6万年BPと推定される軽石質火山灰が断層の落ち側で地表下2m付近に出現することからみて、活動間隔はかなり長い(数万年オーダー)と推定される。活動時期についてのデータは得られていない。

古い火山体上の断層崖の比高、火山灰層の推定変位量から求めた活動度は、C級である。

飛岳1断層の地形・地質調査結果

※平成10年度報告書より転載

1)断層の概要

              九州活構造研究会(1989)           活断層研究会(1991)

確 実 度          T                         T

長   さ(q)         3                          3

走   向          EW                         EW

変位の向き       N上がり                       N上がり

変位基準と      飛岳火山溶岩(50万年BP)に40mの    飛岳火山溶岩(50万年BP)に40mの

変 位 量       逆向き低断層崖。                逆向き低断層崖。

平均変位速度    上下方向 0.08                  上下方向 0.08

 (m/千年)      水平方向 −                    水平方向 −

活 動 度          C                           C

2)その他の既往資料

星住ほか(1988)では、飛岳火山を横断する部分についてのみ断層として図示。

3)空中写真判読結果

・飛岳火山溶岩の北傾斜の斜面にE−W方向の南落ちの逆向き断層崖がみられる。変位量は約20m。

・西方延長では、立石山火山の溶岩斜面に比高40m程度の断層崖がみられる。東方の池代火砕流( 2,000年BP)の堆積面には変位はみられない。

・長さは約1.9q。

4)地表踏査結果

・並柳牧場内の沢の中の地点で南落ちの断層崖の直下にあたる、立石山火山を構成するとみられる火砕流堆積物及びその上位の軽石層を変位させている断層露頭を見出した。変位量はそれぞれ2m以上である。

・断層近傍の並柳牧場内で同様に火砕流堆積物と上位の軽石層を変位させている南落ちの断層を見出した。この段層は、地形には表れておらず、K−Ah火山灰にも変位を与えていないが、変位の累積がみられる。

・この軽石層は、現段階では既往文献に示された広域テフラとは対比できていない。

5)評   価

・立石山安山岩(57万年BP)、飛岳火山溶岩(38万年BP)の変位量から求めた平均変位速度は、上下方向で0.05〜0.07m/千年程度で、活動度はC級となる。

・最新活動時期は、池代火砕流流下より前であるが、K−Ah火山灰との関係は確認されていないが、地形的な明瞭さからみると、かなり新しい時期に活動したとみてよいと思われる。近傍の露頭の断層は、K−Ah火山灰下位の黒ボク土は変形させているが、地形には表れていない。この断層と比較すると、飛岳1断層は、K−Ah火山灰以後に活動した可能性が高いと判断される。