トレンチ調査結果

平成１０年度調査で見出した断層露頭の近傍で、表層の堆積物が比較的厚いと思われる地点を選定してトレンチ掘削を行った。これらの結果は、スケッチ図、写真、試料分析結果として巻末資料にまとめた。調査結果をもとにした活動性評価を図３−４−２に示す。

�@断層の位置

福万山火山由来とみられる石質火砕流堆積物の堆積面上の南落ちの断層崖は、比高１０ｍ以下で開析がすすんでいる。トレンチは、崖斜面下の遷緩点付近で掘削し、断層を確認した。

�A断層の形態・変位センス

断層の走向は東西に近く（Ｎ８３Ｅ）、傾斜は鉛直ないし高角で北へ傾斜している。地質分布からみた変位センスは南落ちであるので、断層の形態としては、少なくとも一部では逆断層的である。

�B変　位　量

確認された上下方向の変位量は、次の通りである。

Ｋ−Ａｈ火山灰（６，３００年ＢＰ）：０．２ｍ程度

黒ボク土下限（１０，０００年ＢＰ）：０．４ｍ程度

火山灰質粘土：１．０ｍ以上

�C活動時期

最新活動時期は、落ち側で厚くなっている地層（黒ボク土）の年代からみて、おそらく１，８００年ＢＰ以後と、その前の末道は６，３００年〜１０，８００年ＢＰの間である。

�D活動間隔、１回の変位量

新しい２回の活動間隔は、４，５００〜９，０００年であることから、活動間隔は数千年オーダーと判断される。上下方向の１回の変位量は０．２ｍ程度と評価できる。

�E平均変位速度、活動度評価

福万山由来火砕流堆積物の上面、表層の黒ボク土層の変位から求めた上下方向の平均変位速度は、Ｃ級と判断される。

秋山断層の地形・地質調査結果

※平成１０年度報告書より転載

１）断層の概要

　　　　　　　　　　　　　　九州活構造研究会（１９８９）　　　　　　　　　　　活断層研究会（１９９１）

確　実　度　　　　　　　　　　�T　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　�T

長　　　さ（�q）　　　　　　　　　３　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　３

走　　　向　　　　　　　　　　ＥＷ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ＥＷ

変位の向き　　　　　　　Ｎ上がり　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｎ上がり

変位基準と　　　　　　秋山安山岩（６０万年）に５０ｍの断層崖。　　　　秋山安山岩（６０万年）に５０ｍの断層崖。

変　位　量　　　　　　扇状地面（Ｆ１２：>１万年）に５ｍの低断層崖。　　　

平均変位速度　　　　上下方向　０．０８､<0.5　　　　　　　　　　　　　　　　上下方向　0.08

　（ｍ／千年）　　　　　　水平方向　−　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　水平方向　−

活　動　度　　　　　　　　Ｂ　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　Ｂ

２）その他の既往資料

星住ほか（１９８８）では、推定断層として図示。立石山断層に連続させている。

３）空中写真判読結果

・秋山安山岩溶岩の斜面、福万山起源とみられる火砕流堆積物の上面にＥ−Ｗ方向の南落ちの（低）断層崖がみられる。風隙もみられる。

・変位量は、秋山溶岩で最大約５０ｍ。火砕流堆積面上で１０ｍ以下。前者はかなり開析されており、後者の方が変位基準面としては確実。

・秋山と日向山の間では、断層活動により閉塞谷が形成されており、米軍撮影の空中写真では形成された谷底平野の上にも南落ちの段差がみられる。変位量は５ｍ以下である。

・長さは約２�q。

４）地表踏査結果

・リニアメント位置で、Ｋ−Ａｈ火山灰とその下位の礫混り粘土（火砕流堆積物の風化部）に南落ちの変位を与えている断層の露頭を確認した。

・秋山と日向山の間の谷底平野上の段差は、現在は人工改変により大部分が消失しているが、一部残っている部分でトレンチ調査が可能である。

５）評　　　価

・各変位基準から求めた上下方向の平均変位速度は次の通り

秋山溶岩　　０．０８ｍ／千年

火砕流堆積物　　０．０２ｍ／千年

・活動度はＣ級である。

・最新活動時期は、断層露頭の地質状況からみて、Ｋ−Ａｈ火山灰降下以後と判断される。

・秋山東方の谷底平野でトレンチ調査を行うことで、活動性についてのより詳しい情報が得られると考えられる。