(1)府内城測線

@ No.6孔の深度13.70〜13.80mの試料とNo.9孔の13.95〜13.97mの試料は、層相からみて同一層準と判断されたが、含まれる火山ガラスの性質も次の点で類似しており、由布岳系の火山灰と推定され、層相観察での判断を裏づけるものであった。

・両試料ともにAT火山灰、K−Ah火山灰、その他の3〜4種の火山ガラスが混在している。

・鉱物組成からみても、両試料とも、斜方輝石、単斜輝石を多く含む。

・非常に高い屈折率(1.53以上)の火山ガラスが共通して含まれる。

ANo.9孔の深度37.10〜37.15mの試料は、ほとんどがK−Ah火山灰由来のガラスからなるが、全体に細粒であることや火山ガラスの形態からみて、水中で再堆積した試料と推定される。

BNo.9孔の深度37.40〜37.45mの軽石礫は、含まれる火山ガラスが、ほぼ水和が完了していることから、かなり古い時代のものと推定される。火山ガラスの屈折率は1.504程度である。広域火山灰としては同定できなかった。

CNo.3孔のK−Ah火山灰層(白色火山灰層:深度27.3m)の直上、直下の試料(深度27.0m,27.25m,27.95m,28.50m)について分析したところ、K−Ah火山灰由来のガラスは、直上の試料中には大量に含まれていたが、直下の試料からは、全く検出されなかった。

このことから、白色の細粒火山灰として肉眼で認められる火山灰層は、水中で再堆積したものではあるが、K−Ah火山灰の噴出直後に堆積したものであり、その層準をK−Ah火山灰の噴出年代とみてよいと判断される。なお、この火山灰層の下限より下位の層準に含まれる火山ガラスは、AT火山灰、Kj−P1軽石層、ASO火砕流等に由来するものと推定され、これらの噴出、降下年代と矛盾はない(本節の補論を参照)。