5−2−3 トレンチにみられる地層

金山地区(図13)で実施したボーリング調査及びトレンチ調査による地層区分を表5に示す.年代測定(表6)等の結果,ボーリングコア及びトレンチ壁面に見られる地層は,約7,900yBP以降の完新統,更新統(低位段丘堆積物,風化した礫層),鮮新統に区分される.さらに完新統はT〜X'層に分けられる.また,トレンチ調査では,特徴的なシルト層や砂層等が認められ,図15に示すようにこれらの地層に名前(Wa層〜We層,Xa層〜Xc層)を付けた.このうちトレンチ内には,シルト岩(鮮新世の鍬江層とみられる)と約6,500yBP以降の未固結堆積物が認められる.平成11年度の群列ボーリング調査によるX層はX'層に改めた.

以下にトレンチ内の各地層の概要を示すとともに,図15及び図16に壁面スケッチ図を示す.

[T層]

砂層を主体とし,シルト層を挟む.層相の側方変化が激しく,チャネル堆積物※1が認められる.全体的に水平に堆積しているが,チャネル※1を埋積する地層や層相が側方変化している部分は見かけ上傾斜している.

[U層]

シルト層を主体とし,砂層を挟む.チャネルが多数認められ,チャネルは主として砂で埋積されている.北側壁面のN4・深度2.2m付近で3,000yBPの年代値が得られており,ボーリング調査の結果を踏まえると,U層の年代は約2,500〜4,000yBP程度と推定される.全体的に水平に堆積しているが,チャネルを埋積する地層は見かけ上傾斜している.

※1:例えば,図15のN10深度3m付近に見られるV層を削りU層が堆積したような凹地状の地層境界をチャネルとした.

また,このチャネルを埋積する堆積物をチャネル堆積物とした. [V層]

砂層を主体とし,シルト層を挟む.V層上面の一部は侵食されている.北側壁面のN4・深度3.0m付近で約4,500yBPの年代値が得られており,ボーリング調査の結果を踏まえると,V層の年代は4,500〜5,000yBP程度とみられる.

[W層]

砂層と腐植質シルト層の互層からなる.図15に示すように,これらの互層のうち特徴的な地層にa〜eの記号を付した.全体的にほぼ水平であるが,Wb層以下は東に傾斜しており,特に,北側壁面のN7以東は5〜20゚傾いている.Wa層が水平でWb層及びその下位の地層が東に傾斜していることから,層厚が変化しており西で薄く(50p程度),東で厚く(2m程度)なっている.この傾向は,Wb層〜Wc層が顕著であり,Wd層にアバット※1している.We層は,N6付近でWd層と指交※1している.年代値は,Wb層から5,850±70yBPと  6,110±90yBPが,Wc層から5,960±90yBPと6,040±100yBPがそれぞれ得られている.

[X層]

鍬江層を覆う腐植質シルト層(Xa層),砂層(Xb層),礫層(Xc層)からなる.北側壁面では,鍬江層の上面がほぼ水平である部分にXc層が載っており,鍬江層上面が東に傾いている部分にXa層とXb層が東に傾斜して載っている.N6付近でX層は不連続になり,Wd層に覆われる.年代値は,Xa層から6,450±130yBPと6,660±60yBPが得られている.X層の傾斜は鍬江層の上面の傾斜とほぼ同じであり東に30゚である.

[鍬江層シルト岩]

ほぼ均質な亀裂質のシルト岩を主体とし,最上部の侵食面近傍数10pは風化し粘土化している.また,図15のN8以東は破砕され角礫状を呈している.本層上面の分布はN6付近以西がほぼ水平で,N6付近以東が30゚程度東に傾いている.