(1)加治川断層

[トレンチに見られる地層とその変位・変形]

トレンチ内に鍬江層相当のシルト岩と約6,500年前以降の未固結堆積物が認められた.トレンチ内の未固結堆積物はT〜X層に区分される.シルト岩の上面はトレンチの東部で東に向かって分布高度を減じている.このうち,X層は昨年度調査ではW層に含めていたが,約6,500年前の地層であり,W層と構造的な相違が推定されるのでW層と区別した.このX層は鍬江層シルト岩の上面の傾斜に沿って東に傾斜している.X層は腐植質シルトや砂層からなりほぼ等厚で東に傾斜していることから断層変位を受けている可能性がある.一方,W層は約6,000年前の地層で,W層上部は下位層にアバットしている.少なくとも,トレンチ壁面にはW層上部に変位・変形は認められない.また,T〜V層は,ほぼ水平な堆積層でトレンチ内では断層による変位・変形は認められない.

[最新活動時期]

X層が断層変位を受け,W層上部が受けていないとすれば,加治川断層の最新活動時期は約6,600±50yBP以降,5,950±50yBP以前である.

[単位変位量]

単位変位量の鉛直成分は3.0〜3.5m程度と推定される.

[地震セグメントの長さ]

金山地区で得られた同断層の単位変位量から求められる地震セグメントの長さは約30〜50q程度より長いと推定される.

[月岡断層帯との関連]

加治川断層と月岡断層帯が一つの活動セグメントを構成している可能性が高い.この場合,長さは最大約50qとなる.また,月岡断層帯と櫛形山脈断層帯が同時に動いたとすると,その時期は5,900yBP程度と推定される.

[想定される地震の規模]

加治川断層と月岡断層帯とが同時に活動する際の地震の規模(モーメントマグニチュード;MW)は7.4〜7.5程度と推定される.