5 まとめ

今回の調査結果をまとめ以下に示す.

・櫛形山地西方断層

荒川町荒島地区に分布する地形面(Ku−3面)の落差と年代を把握し,同断層の平均変位速度を求めるために,ピット調査を実施した.その結果,@断層西側に分布する Ku−3面は,断層東側ではより新しい堆積物に覆われ,地表下2.6mに埋没しており,落差が10.9mである.A14C年代測定結果からKu−3面の形成年代が約43,000yBPより古いことが分かった.これらのことから同断層の鉛直方向の平均変位速度は0.25m/1,000年程度より小さいと推定される.

・加治川断層

1)貝屋地区

断層東側の沖積層下に埋没していると推定されるKj−5面の落差と年代を把握し,同断層の平均変位速度を求めるために,ボーリング調査を実施した.その結果,Kj−5面に相当する地形面の位置は確認できなかったが,KY−2孔の深度9.1m付近にシルト層の分布が確認された.このシルト層と平成10年度のピット調査で確認されたシルト層は互いに近い年代値(約33,000yBP)を示すことから,これらを同時面と仮定すると,その落差は約8.5mとなる.これらのことから求められる同断層の鉛直方向の平均変位速度は0.25m/1,000年程度であると推定される.

2)貝塚地区

主として加治川断層の最新活動時期,再来間隔,単位変位量を求める資料を得るために,群列ボーリング調査を実施した.その結果,加治川断層沿いの地下地質状況が明らかになり同断層の平均変位速度を算出するための資料と,活動履歴や単位変位量を評価するための資料などが得られた.加治川断層の平均変位速度は,0.3〜0.5m/ 1,000年程度であると推定された.

また,低位段丘堆積物を変位させる断層が2箇所で確認でき,加治川断層が西側隆起の逆断層であることと,深度15m以浅における断層面の傾斜角が約45゚であることなどが分かった.また,地下における地層の分布・傾斜・14C年代から加治川断層の最新活動時期が約5,900yBPより新しいこと,さらに約4,900yBPより新しい可能性があることが判明した.同断層の単位変位量は,鉛直方向に約1.4mであると推定された.ただし,これらの加治川断層の性状に関する値は,群列ボーリングによる地層の対比が確定的でないので,トレンチ調査により整合性を確認する必要がある.

・五十公野丘陵東縁断層

五十公野丘陵東縁の地表踏査を実施した.その結果,Kj−2面堆積物及び下小中山層が西に傾斜し五十公野丘陵東縁で分布が不連続であること,風隙及び撓曲崖的な崖が認められることなどから西側隆起の断層の存在が推定される.