4−5 最新活動時期および単位変位量

最新活動時期について検討する。

地形面調査結果によれば月岡断層沿いには、沖積面に比べ数10cm〜1m程度標高の高い沖積段丘面が認められ(図4−1−4−1図4−1−4−2参照)、断層付近に分布する沖積段丘面の一部は、西に緩やかに傾動し(傾斜2〜6゜程度)、それ以降の沖積面にはこの様な傾動は認められない。沖積段丘面を覆う腐植土中には、縄文式土器が含まれること、腐植土からは3,070±190〜3,090±60 y BPの14C年代が得られていること、月岡南地区において約6,000年前に形成された扇状地面(E1面)に低断層崖が認められることから判断すると月岡断層の最新活動時期は、約6,000年前以降と判断される。

月岡断層の北部に位置する戸板沢地区のボーリング調査結果によれば、西側隆起、傾斜25゜の逆断層が2条確認された(図4−2−2 参照)。低地側で確認された断層は、村杉低地を構成する谷底堆積物(33,130±350 y BP)と安野川層が、西傾斜の逆断層で接しているのが確認されたが、最も東側のボーリング孔で確認されたため断層による変位がどの層準まで及んでいるか特定できない。リニアメントの直下で確認された副次的と考えられる断層は、安野川層とD層(7,640±50 y BP)が西傾斜の逆断層で接し、

D層に約1mの変位が認められる。D層の上位のE1層(6,090±50〜6,420±50 y BP)については、この断層が副次的な断層と考えられることから、前回のボーリング精度では変位を及ぼしているかどうか特定できない。従って、戸板沢地区のボーリング結果からは、D層の堆積年代である7,640±50 y BP以降に断層が活動したと判断されるが、いつの時代まで活動したか特定できない。

今回月岡南地区で実施したAトレンチおよびCトレンチの調査結果によれば、最新活動時期について以下のことが明らかになった。

・A測線上のトレンチ、ボーリング調査の結果から、Aトレンチ直下に断層が想定され、前面側(東側)に断層が転移していないと判断される。(図4−5−1

・A測線沿いにおける調査の結果、Aトレンチ直下のB2層(24,380±110〜30,200±250 y BP)には変位がおよんでおり、E3層(4,630±70〜4,750±70 y BP)以降の堆積物には変位が認められず、断層の活動時期は4.600〜24,500年前の間であると判断される。

・Cトレンチの平野側では、主断層に伴うバックスラスト(副断層)と判断される東傾斜で、変位10cm程度の逆断層が8条認められる(図4−5−2)。

・Cトレンチで確認された副断層の一部は、D層中の植物根跡の腐植土(5,670±40〜5,870±50 y BP)を変位させている(図4−5−3)。

上記のことから判断すると、月岡南地区のトレンチ調査から判断される最新活動時期は、5,670±40 − 5,870±50 y BP以降、4,630±70 − 4,750±70 y BP以前と考えられる。

月岡南地区のトレンチ調査から判断された月岡断層の最新活動時期は、上記した戸板沢地区および地表踏査の結果に矛盾しないものであり、月岡断層の全体の最新活動時期を示すものと考えられる(表4−5−1)。

次に単位変位量について検討する。

月岡南地区B測線で実施した調査結果によると、B測線付近に分布する扇状地面(E1面)は比高3mの低断層崖にによって切られ、断層上盤の断層付近では、断層活動に伴う変形が認められる。断層による変位が認められる扇状地堆積物(E1層基底面を基準)の鉛直方向の変位量は、3mである(図4−2−3)。約6,000年前 に堆積した地層の変位量が3mであり、前述したように月岡断層の最新活動時期は、5,670±40 − 5,870±50 y BP以降、4,630±70 − 4,750±70 y BP以前であることから、E1層基底面を基準として求めた変位量は、1回の断層活動によって形成された単位変位量であると考えられる。

断層のセンスで記述したように、地形的特徴から指摘される横ずれ変位は想定しにくいこと、反射法地震探査結果によれば断層面の傾斜は60゜程度であること、ボーリング調査結果によれば地表付近では約25゜程度であることから判断すると1回の断層活動による実変位量は、傾斜60゜で3.5m、傾斜25゜で7.1mとなる。