(1)A測線

A測線(A−A’断面)の地質断面図を図3−2−6に、Aトレンチの法面スケッチを図3−2−2に、Bトレンチの法面スケッチを図3−2−3に示す。

調査結果をまとめると以下のようである。

1.A測線では、図3−2−6に示すように、下位からB層(24,380±110〜30,020±250 y BP)、C層(13,700±50〜19,700±80 y BP)、D層(6,840±70〜7,620±120 y BP)、E1層〜E5層(1,000±50〜6,310±60 y BP)が分布する。

2.B測線付近の低断層崖の延長上で実施したAトレンチでは、断層は確認されない。本トレンチでは、E2層(5,330±70 y BP)〜E5層(1,000±50 y BP)が分布し、各層に含まれる礫に、回転構造や異常な配列などは認められず、腐植質シルトの挟在層や砂層中の葉理構造は、ほぼ水平の傾斜で連続しており、変位・変形構造は認められない。

3.上述した低断層崖の前面側に位置する扇状地面(E4面)上のリニアメント(1m程度の低崖)をまたいで掘削したBトレンチでは、断層は確認されない。本トレンチは、E1層(6,310±60 y BP)〜E4層(2,520±50 y BP)が分布し、低崖を挟んだ両側でE3層(4,750±70 y BP)およびE4層(2,520±50 y BP)が連続的に分布することが確認された。

4.ボーリング調査結果によると、トレンチで確認された地層より下位の地層は、測線の西端でE2層がC層、D層およびE1層を大きく削り込んでいることを除けば、緩い東傾斜で一様に分布している。A測線における各層(E2層を除く)の見かけの傾斜は、現地表面と概ね平行である。

5.E2層は、下位のE1層、D層とアバット不整合の関係で重なっている。これは、繩文海進と同時期に堆積した村杉低地堆積物および扇状地堆積物を、A測線西側の沢が浸食して、これを埋めているためで、断層活動によるものではない。

6.月岡−2孔および月岡−4孔のボーリング調査の結果によると、B2層(24,380±110〜30,020±250 y BP)の上限面に高度差が認められ、Aトレンチ直下に断層が存在するものと考えられる。

7.断層直上に分布するE2層の変位の有無について、Aトレンチでは、E2層の最上部(5,330±70 y BP)が確認され、E2層中の挟在層は地形面とほぼ調和的に堆積し、断層近傍にもかかわらず、変位、変形構造は確認されない。しかし、Aトレンチで確認されたE2層の分布範囲は、幅3m程度と狭く断層の変位が及んでいるかどうかを特定できない。また、ボーリング調査によりE2層の年代測定結果が多数得られたものの土相変化が著しく詳細な対比が困難であり変位の有無について特定できない。しかし、直上のE3層(4,630±70〜 4,750±70 y BP)は、腐植質シルトの挟み層および砂層の葉理構造がほぼ水平で、東西方向の連続性が良いことから、本層およびそれ以降の地層には、断層活動による変位は及んでいないと判断され、4,630±70〜4,750±70 y BP以降は活動していないと考えられる。

以上の結果をまとめると、

断層は、Aトレンチの直下に位置しており、B2層を変位させており、E2層に変位が及んでいるか特定できない。しかし、E3層以降は変位させておらず、4,630±70〜24,380±110 y BPの間に少なくとも1回の活動があったと考えられる。この間の活動性については、AトレンチにおいてE2層の分布範囲が狭いこと、E2層の土相変化が著しくボーリング調査では変位の有無を特定できず、活動性については判断ができない。

なお、低断層崖の前面側に判読された低崖は、断層活動によるものではなく、E3層堆積後の浸食崖もしくは人工的な崖であると考えられる。