3−1−2 ボーリング調査・年代測定及び諸分析結果の考察

(1)ボーリング調査結果

ボーリング調査によるB−1地点の層序を表3−1−2に示す。また、地層構成の概要を図3−1−2−1図3−1−2−2、縮尺1/200地質柱状図に示す。

表3−1−2 B−1地点における層序区分

(2)放射性炭素同位体年代測定(14C年代測定)結果

B−1ボーリング試料を用い14C年代測定を行った結果、表3−1−3の結果を得た。

表3−1−3 14C年代測定結果

(3)諸分析結果

@イオウ分析

B−1ボーリング試料の内、南陽層および熱田層の試料についてイオウの含有量を測定し、表3−1−4の結果を得た。

表3−1−4 イオウ分析結果

南陽層(@〜B)は、縄文海進期における海成の堆積環境を示す。熱田層(上部:C)は淡水成、(中部:D)と(下部:E)は汽水成から海成の堆積環境を示す。

A粘土混濁水の電気伝導度測定

B−1ボーリング試料の内、熱田層の試料について粘土混濁水の電気伝導度測定を行い、表3−1−5の結果を得た。

表3−1−5 電気伝導度測定結果

一般に海成粘土は1.3〜3.0mS/cm、汽水成粘土で0.4〜1.2mS/cm、淡水成粘土で0.2〜0.4mS/cm程度である。このことから、試料@・Aは淡水成、B・Cは汽水成、D・E・Fは海成の堆積環境を示すと考えられる。

Bテフラ分析

B−1ボーリング試料の中で、37.56〜37.72m間に認められた火山灰層は、地層対比の鍵層になり得る可能性があったので、テフラ分析を行った。

分析の結果、中山・古澤(1989)に記載された20枚のテフラ層の中で、火山ガラス形態・火山ガラスの屈折率・重鉱物組成の3つの要素が対比して矛盾のないものは、東谷火山灰層(Higashidani)および佐布里火山灰層(Souri)の2枚のみであることが判明した。さらに露頭での観察記載を検討すると、佐布里火山灰層(糸魚川,1971)がより近似すると判断される。

β石英の含有の面で、過去の記載に無い特徴があるためさらに慎重な検討を要するが、今回は佐布里火山灰に最も近いとして結論づけた。

佐布里火山灰の直下には東谷火山灰が分布するが、東谷火山灰はフィッショントラック年代が測定されており、3.6±0.2Ma(360万年)の年代値が報告されている。従って、佐布里火山灰層もそれに近くやや若い年代値(約350万年前後)を持つと推定される。

(4)考察(まとめ)

@ B−1ボーリング地点での南陽層は、分布深度の下限がGL−21.96m(標高−17.10m)であり、層厚は12.96mである。深度GL−16.24mの付近で砂質分に富む上部層と、粘土質分に富む下部層に区分される。縄文海進最盛期における海成堆積物である。

A 第一礫層は、分布深度がGL−21.96〜−24.20m(標高−17.10〜−19.34m)であり、層厚は2.24mである。径2〜40oの円礫・亜円礫を含み、全体に淘汰の悪い砂礫層であり、段丘堆積物と考えられる。

B 熱田層は、分布深度がGL−24.20〜−27.90m(標高−19.34〜−23.04m)であり、層厚は3.70mである。年代測定及び諸分析の結果から、熱田層上部層の小海水準変動期(桑原,1985)における淡水成〜海成の堆積物と考えるか、あるいは、熱田層下部層から上部層への移行期の堆積物と考えるかは、今後のボーリング調査結果を含めて検討する必要がある。軽石層は認められない。

C 第二礫層(海部・弥富累層)は、分布深度がGL−27.90〜−33.00m(標高−23.04〜−28.14m)であり、層厚は5.10mである。径2〜40o、最大60oの円礫〜亜角礫を含む砂礫層で、礫種はチャートが主体で、一部に漂白チャートが混入、濃飛流紋岩礫は確認されない。海部・弥富累層の最上部の堆積物と考えられる。

D 東海層群上面の分布深度はGL−33.00m(標高−28.14m)である。固結した青灰色の砂層とシルト層の互層からなり、一部に亜炭の薄層を挟む。ほぼ水平の堆積構造を示す。深度GL−37.56〜−37.72m間に、佐布里火山灰層(約350万年前)に最も近似すると考えられる火山灰層が確認された。

図3−1−2−0 地質柱状図凡例

図3−1−2−1 縮尺1/200地質柱状図(0〜40m)

図3−1−2−2 縮尺1/200地質柱状図(40〜70m)

図3−1−3総合解析図(平成9年度 東海市新宝町)